石丸伸二氏の躍進とイラン大統領選で保守強硬派が惨敗の“共通点”

 大統領が5月にヘリコプターによる事故で亡くなったイランでは7月5日、次の指導者を選ぶ大統領選挙が行われ、改革派のペゼシュキアン氏が1638万票以上を獲得し、保守強硬派のジャリリ氏(1353万票あまり)に勝利した。

 ペゼシュキアン氏は米国と対立してきたライシ前政権の外交路線から脱却し、関係改善を進めていく方針を打ち出している。勝利した背景には、米国による経済制裁によって疲弊する国内経済に苦しみ、イスラム教徒の女性が髪を覆う布「ヒジャブ」の着用をめぐるイラン当局による統制強化などに不満を抱く若者たちの支持がある。若者たちの多くは経済の立て直しや米国との関係改善を求めており、保守強硬派の既存体制に強い不満と怒りを持っている。今回の勝利は、そういった若者たちの声が反映されている。

 似たようなケースは他にもある。台湾では1月に総統選挙が行われたが、民進党の頼清徳現総統が得票率40%を獲得して勝利したものの、国民党の侯友宜氏が33%、民衆党の柯文哲氏が26%とかなり拮抗する結果となった。この選挙で大きく支持を伸ばしたのが民衆党だ。台湾は長年“民進党or国民党”を続けてきたが、思うようにお金が稼げず、結婚もできず、子供も持てないと悩む若者たちが増えていて、既存政党への不満が広がってきた。その中で民進党でも国民党でもない第3党の民衆党が台頭したことで、若者たちの支持が集まることになった。

 そして、こういった若者たちの既存政党、既得権益層への不満は、東京都知事選挙でも鮮明になった。7月7日に実施された都知事選では現職の小池百合子氏が292万票あまりを獲得して3選を果たしたが、それ以上に注目されたのが前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏だ。石丸氏は166万票あまりを獲得して2位となり、立憲民主党元国会議員だった蓮舫氏を上回った。石丸氏は10代~20代から4割もの支持を獲得したが、その背景には“年金額を保障してほしい”、“子育てしやすい環境を整備してほしい”などを切実に願う若者たちの本音がある。

 都知事選という地方選挙を国政選挙と比較することはできないが、こういった若者たちの年配層、既得権益層への不満は、今後世界で広がっていくかもしれない。

(北島豊)

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