かつて地方の多くの駅そばで可能だった、そばやうどんのテイクアウト。20~30円の発泡スチロール製の容器代は別途必要ながら車内に持ち込んで食べることができ、実際に利用したことがある方もいるだろう。
しかし、持ち込み用容器の販売をとりやめる店舗が年々増え、今でも可能な駅そば店は全国でもごく一部となっている。なぜ衰退していったのだろうか? 駅グルメに詳しいフードジャーナリストによれば、いくつかの大きな要因があるという。
「もともと駅そばのテイクアウトは、夜行などの長距離列車の利用客に人気でした。しかし、ブルートレインが全盛だった70年代と違って、現在定期運行している夜行列車は『サンライズ出雲・瀬戸』のみ。大前提として需要が減ったことが挙げられます」
また、駅構内に売店やコンビニのテイクアウト可能なファストフードなどの飲食店が増えことも大きく関係していると指摘する。
「店の数が増えたことで購入の選択肢が広がったわけです。特に大きなターミナル駅だとデパ地下並みに充実した食品売り場もあり、どうしても駅そばが食べたい人以外の利用は期待できません」
そして近年問題視されている「スメルハラスメント」に対する配慮もあると指摘する。実際、新大阪駅の新幹線改札内で販売されるたこ焼きや串カツなどには《新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います》と明記されている。
「そばつゆの匂いも結構強いため、ここ10年15年で持ち込み容器の販売を廃止したところはその辺の事情があったのかもしれません。とはいえ、札幌駅のホームにある駅そば店のように今でもテイクアウト可能なところもあり、道内各地に出発する特急の出発前に買う求める人の姿を見かけます」
ただし、いくら別売り容器で持ち込み可能とはいえ、車内でそばやうどんをすするには勇気が要りそうだが…。
※画像は、現在も持ち帰り容器を取り扱っているJR札幌駅の駅そば店