「青森県がなくなる」知事衝撃発言、「独身税」も逆効果になる「少子化対策」の限界

 6月4日、厚生労働省が発表した「人口動態統計月報年計(概数)」によれば昨年度、日本国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人で、これは前年の4万1227人減。同省によれば、出生率は16年から9年連続で減少傾向にあるものの、70万人を下回ったのは1899年に統計を取り始めて以降初。

 さらに、女性一人が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は1.15で、こちらも前年の1.20から低下。31.0歳という第1子出生時の母親の平均年齢を見ても、少子化に晩婚化・晩産化が拍車をかけている現状が窺い知れる。

「合計特殊出生率が、過去最低の1.14となった青森県では、宮下宗一郎知事が会見で『人口減少は国家有事。このままいくと、青森県がなくなります』と悲痛の表情で語るなど、東北地方が抱える深刻な状況が改めて浮き彫りになっています」(全国紙記者)

 岸田前首相の目玉政策として始まった異次元の少子化対策。むろん、これ以上、少子化による人口減少に歯止めがかからなければ、年金や医療、介護などの社会保障制度を維持することが困難になり、日本経済全体が縮小していくことは必至だ。しかし、悲しいかな厚労省が発表した数字を見る限り、結婚や出産適齢期世代が政府が打ち出す少子化対策に、ほとんど期待を寄せていなかったことが見て取れる。

 そんな政府は2024年6月、「全世代・全経済主体が子育て世帯を支える新しい分かち合い・連帯の仕組み」を謳う、改正子ども・子育て支援法を成立させた。これは児童手当の抜本的拡充など3兆6000億円規模の給付拡充に向けた取り組みで、うち1兆5000億円は既定予算を活用。1兆1000億円は歳出改革で捻出し、残る1兆円は「子ども・子育て支援金」制度を設けて社会保険料に上乗せする形で徴収するというものだ。

 来年4月からは、この子ども・子育て支援金制度に基づき、新たに「独身税」がスタートするが、これは1人あたりの医療保険に月額250~450円が医療保険に上乗せされる形で徴収されるというものだ。

「一応、政府の謳い文句は『これから結婚・出産を控える人、子育て世帯を国全体で応援する仕組み』だとしていますが、結局、恩恵をこうむれるのは子育て世代だけ。未婚であったり、結婚していてもまだ子どものいない世帯にとっては、この子ども・子育て支援金は見返りのない、ただの『独身税』でしかない。独身者にとっては実質的に単なる負担増となり、生活に余裕がない人たちは、さらに結婚や出産を躊躇するのではないでしょうか。つまり、抜本的な対策も施さず、この程度の小手先対策をしたところで、岸田元首相が『待ったなしの課題』と熱弁をふるった『少子化傾向の反転』など到底できるはずはない。まさに絵に描いた餅だということです」(同)

「増税メガネ」と揶揄され、様々な増税プランや社会保険料アップを机上に乗せてきた岸田氏だが、さすがに今の時代、「金さえバラまけば問題が解決する」との考えは浅はか。と同時に、「あとは知らないよ」的な考え方が、結婚や出産適齢期世代に、完璧に見透かされてしまったといってもいいかもしれない。

 フィリピン大学ロスバニョス校の研究者らにより「PLOS One」に掲載された論文によれば、これまで女性1人当たり2.1人とされていた、人口の増減が長期的に一定に保たれる「人口置換水準」は、新たな研究で2.7人であることがわかったという。つまり、人口の持続可能性を確保するには、この数字よりも高い出生率が必要だということ。日本の未来に、はたして希望はあるのだろうか。

(灯倫太郎)

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