厚生労働省から日本の安全保障を脅かす数字が発表された。2023年の合計特殊出生率が前年から0.06ポイント下がって1.20となり、8年連続の減少で過去最低を更新した。昨年生まれた子供の数は72万7277人と前年から4万人あまり減少し、統計が始まった1899年以降で過去最小。全ての都道府県で前年を下回り、東京では0.99と初めて「1以下」となっている。
日本政府もこれを危機的に捉えているようだが、日本の安全保障にとっても大きな危機だ。単純計算だが、子供の数が減少するということは自衛隊員の数も必然的に減っていくことになる。日本の国土は米国や中国、ロシアなどと比較すれば極めて小さく、面積は中国の26分の1程度で、自衛隊員が減少しても日本の防衛には問題ないようにもみえる。しかし、日本は世界第6位(4位という見解もある)の海洋面積を誇る海洋大国であり、海洋面積は中国の5倍ほどだ。要は、日本の防衛にとって重要になるのは海であり、いかに領海や離島を守れるかが重要になるのだ。
しかし、自衛隊員の数が減少することで、日本本土から遠く離れた離島の貿易が形骸化する恐れがある。その1つが小笠原だ。2020年7月、日本の最南端・沖ノ鳥島付近の排他的経済水域で、中国の海洋調査船が海中にワイヤーのようなものを下ろし、海洋調査を行っている様子を海上保安庁の巡視船が発見した。また、小笠原諸島の父島や母島の近海では14年9月、中国船によるサンゴの違法密漁が明らかになり、同年10月中旬までは1日に発見される船が30隻から50隻あまりだったが、10月下旬から11月中旬にかけては190隻から200隻あまりと劇的に増加していた。
中国は軍民融合を押し進めており、武装漁船の数も増加傾向にある。対し自衛隊員の数が今後長期的に減少傾向に転じることになれば、小笠原など離島防衛が疎かになり、離島が無人島化し、それによって中国の武装漁民などがそれらを実効支配していく恐れがある。出生率低下は日本の安全保障にとって深刻な脅威となりつつある。
(北島豊)