備蓄米が小売業者に「1.4%」しか届かない…一方で悪質化する「激安販売詐欺」

 令和のコメ騒動は、まったく収まる気配がなさそうだ。

 コメの高騰が続く中、備蓄米の放出から約1カ月半を経過した4月30日、農水省が備蓄米の流通状況を公表。それによれば、3月に放出した備蓄米約21万トンのうち、同月13日までにJA全農などの集荷業者に引き渡された量は、およそ65%に当たる約13万8000トン。そのほか卸売業者などには全体の9%、約2万トンが引き渡されているが、同日の段階でスーパーなど小売業者に届いているのは、わずか1.4%のみという。

 おかげでコメの値段は落ち着くどころか、5月に入りついに5キロで5000円超えの店が続出。消費者からは「もう毎日コメが食べられない」「パンやパスタでしのいでいくしかない」といった悲痛な声が上がっている。全国紙経済部記者の話。

「政府による備蓄米放出の発表があった時には、救世主になるのでは、との期待も膨らんだものの、蓋を開けたらこの体たらくですからね。政府は流通量が増えない理由を、運搬するためのトラック不足や精米に時間がかかるからだと説明しています。ただ、そんなことは事前にわかりきっていたことで、事前に策を講じることはできなかったのか。専門家によれば、5月下旬頃から市場に出回る量も増えてくるとされていますが、それでも5キロで4000円は切れないとの見方もあり、しばらくは5000円超えの高級米が出回ることになりそうです」

 そんな中、コメを扱う商社や卸売会社の間では、関税を払ってでもコメを輸入しようという動きが出ている。日本は「ミニマムアクセス」(農産物の最低輸入量)で、義務的に年間およそ77万トンのコメを関税をかけず輸入しているが、民間企業もこの枠外でコメの輸入が可能。その場合は1キロ当たり341円の関税が課される。

「もともと商社ではミニマムアクセスの枠で米国などからコメを輸入していたのですが、国内のコメの高騰によるスーパーや外食企業からの注文に対応するため、関税を払ってでも民間輸入の枠でコメを調達し始める動きが始まっているんです。もちろん、この動きにより日本のコメ市場が縮小してしまっては元も子もない話ですが、暫定的な安定供給を図るという意味では大きなメリットがある。特に外食産業業界は、この民間枠での輸入に大きな期待を寄せているようです」(同)

 ところが、なんとかこの「令和の米騒動」を乗り切ろうと努力する企業や業界がある一方、いまだ巷で横行しているのが、SNSを駆使したコメ販売詐欺だ。しかも最近の主流は、実在する店舗の名前を利用し「フォロワー限定でご案内している激安国産米 提供できます」などと謳って公式に似せたSNSアカウントに誘導。代金を振り込ませ、そのままサイトを閉鎖する手口だという。

「TikTok上などにも『個人の米農家』を名乗るアカウントが多数存在し、《コシヒカリ30キロで1万5000円》とか、《1年間の定期購入でさらに割安》といった、気を引くような誘い文句が発信されています。現状、コシヒカリなら5キロで5000円近くしますから、1年間の定期購入を申請する人も多い。ところが、代金を振り込むも、まったく消費が送られてこず、電話をすると『現在その電話は使われておりません』というメッセージが返ってくるというのがお決まりのパターンといいます」(同)

 結局、うまい話には裏があるというわけだが、相も変わらず横行する転売ヤーや販売詐欺。こんな輩に好き勝手にさせないにも、この米騒動が一日も早く終結することを願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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