プロ野球「楽天」、Jリーグ「東京ヴェルディ」など続々提携!“地域防災の危機”にスポーツチームが助け舟を出した理由

 今年の冬は全国各地で山火事が相次ぎ、甚大な被害が発生。一部では住宅街にまで燃え広がり、大切な我が家を失った人もいる。

 こうした火災の際、駆けつけた消防隊員たちが使う「消火栓」がどこにあるのか、一目でわかるように、街中には100メートルから200メートルごとに「赤い看板」が設置してある。

 実はこの看板、民間企業が設置しているということをご存知だろうか。

「あれは、われわれが自治体の正式な許可を得て設置しているものです」

 こう説明するのは「消火栓標識株式会社」の毛利綱作社長だ。

「赤くて丸い『消火栓』のマークの下に、縦40センチ、横80センチの広告スペースがございます。その広告収入によって、消火栓標識の設置、メンテナンスにかかる維持費などを賄っているのです」(毛利社長)

 そんな地域の防災で重要な役割を果たす消火栓標識が存続の危機に立たされている。

「創立(1955年)からしばらくは、地域の商店や病院、飲食店などの広告収入で十分に成り立っていたのですが、急速なスマホの普及やコロナ禍もあり、現在では都内の約8割の広告スペースが空いており、このままでは標識の維持・管理すら厳しい状況です」(同)

 この危機を救おうと立ち上がったのが、地域密着型のプロのスポーツチームだ。

 プロ野球の楽天イーグルス、Jリーグの東京ヴェルディ、モンテディオ山形、JFLのクリアソン新宿などが、地元のスポンサー企業とタイアップして消火栓標識への広告掲出に乗り出したのである。

 これまでも、Jリーグの各チームは「地域のゴミ拾い」や「子供のサッカー教室」、「老人介護施設などへの慰問」といった“ホームタウン活動”に力を入れてきたが、さらに地元企業も巻き込んだ地域貢献に発展しているというわけだ。

 今回の仕掛け人で、社会貢献やSDGsの観点からスポーツチームとスポンサー企業をつなぐ橋渡し役を担う「FUTURE SPORTS株式会社」の代表取締役・岡田猛志氏が言う。

「各チームの特色や地域性を活かした取り組みや、防災プラスアルファにも力を入れています。救命という観点では、AEDの設置推進などへの応用も検討しています。ヴェルディやモンテディオ、楽天イーグルス以外のチームからも多数のお問い合わせを受けていますので、これからどんどんスポーツチームの消火栓標識広告は増えていく予定です」

 あなたの街にも、地元のプロスポーツチームの応援防災広告が出現するかもしれない。散歩や通勤の際に、少し視線を上げて「赤い消火栓標識」を注目してみよう。

※写真:毛利社長(右端)と岡田代表(左から2人目)

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