「今年の2月にあまりにも体の調子が悪くて、病院で検査しましたところ、がんになってしまいました。場所は食道です」
4月3日、自身のYouTubeチャンネルで食道がんであることを公表した「とんねるず」の石橋貴明。食道がんは初期段階での自覚症状がほとんどなく、早期発見が難しいと言われているが、石橋は「診ていただいた先生の話によると、早期に見つかったということで少し安心しているんですが…」としているものの、今後は入院して手術となるため、しばらくの間、芸能活動を休止すると公表している。
食道がんは咽頭から胃につながる食道にできる悪性腫瘍で、その大半が食道の中央付近に発生するとされている。男女比の罹患率では男性が女性の5倍と圧倒的に多く、原因は主に生活習慣にあり、60~70代の男性が多いことからも、長年の飲酒が強く起因しているといわれる。
ただ、先にも触れたように食道がん初期にはほどんど自覚症状がなく、そのために発見が難しい。ただ、以下のような症状があった場合は、速やかに病院で検査を受けることをお勧めしたい。
(1)咳が止まらなくなった…がんが大きくなると気管や気管支を圧迫するため、どうしてもせきが出やすくなる。1週間以上続くようなら要注意。
(2)声がかすれるようになった…食道がんがリンパ節に転移すると、食道付近にある反回神経(声を調整する器官)が麻痺。結果、声帯機能が低下して声がかすれたり、声が出にくくなる。これも食道がん初期における特徴。
(3)食べ物を飲み込む際うまく飲み込めなくなった…がんが大きくなると、食道が塞がれ食べ物がうまく通れなくなる。嚥下障害が起こった場合も食道がんの疑いあり。
(4)胸の奥がちくちくしたり、しみるような感覚が消えなくなった…これも食道がんの初期症状の一つ。食べ物や飲み物を飲み込んだ時、違和感を感じたらまずは医師の診断を。
(5)3ヵ月で5キロ以上体重が落ちてしまった…機能不全により体重の減少はほかのがんも同様だが、特に食道がんの場合は食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえやすくなるため柔らかいものしか口にできなくなる。結果、食事量が減少。3カ月で体重が5キロ以上減少した場合も要注意だ。
食道がんの検査・診断には内視鏡を使った上部消化管内視鏡検査が用いられるが、食道は正面から見た場合、心臓と重なる場所に位置するため、レントゲン造影検査では見つけにくい。近年は人間ドック等のがん検診で腫瘍マーカー検査を行っている病院も多いが、食道がんの場合は、検査の段階で腫瘍マーカーが上昇していないケースもあるため、食道がんの早期発見には向かないともいわれる。
内視鏡検査での生検により、がんを疑う病変から組織を取り、それを病理医が顕微鏡で検査しはじめて食道がんとの確定診断となるわけだが、早期発見の「ステージ0」段階で、食道がんを発見できれば、内視鏡でがんになっている部分を切除することが可能だ。
しかし、「ステージ1」で見つかった場合には、がんになっている一部だけではなく、食道すべて、さらにリンパ節もあわせて切除する場合もあるため、いかに早期発見が大切であるかがわかるはずだ。
まずは生活習慣を見直しリスクを軽減、さらに定期的な健診で早期発見して対応していく。それが、唯一の自己防衛手段なのである。
(健康ライター・浅野祐一)