「令和の虎」29歳・青笹寛史さん死去の衝撃…若年層にも潜む急性心不全のリスク

 YouTubeの人気番組「令和の虎」メンバーだった実業家の青笹寛史さんが6月25日、29歳の若さで急性心不全のため亡くなったことが公式SNSで報告された。青笹さんは島根大学医学部在学中に動画編集フリーランスとして活動を開始。2020年には自身の会社を立ち上げ、「令和の虎」では「あお社長」の愛称で親しまれていた。

 青笹さんを突如襲った急性心不全とは、血液を体の隅々まで送り出す役割を担う心臓の機能が何らかの原因で突然低下し、うまく血液を送り出せなくなる状態を指すものだ。

 心臓を動かす筋肉は、元となる栄養や酸素を心臓表面を走る冠動脈を通じ供給しているが、冠動脈の血流低下により、心臓に血液が十分に供給できなくなることで生じるのが、狭心症や心筋梗塞などだ。そのため心不全が起こると、動悸や息切れ、胸痛、呼吸の苦しさなどが現出。狭心症の場合は、強烈な胸の痛みが5~15分程度続き、心筋梗塞ではさらに長い時間痛みが続くため、呼吸困難や意識障害に陥ることもあり、短時間で重篤な症状が生じることも少なくない。

 ただ、比較的軽症の場合は横になると苦しく体を起こすと楽になることがある。しかし、これは横になることで肺にたまった胸水が肺全体に広がる起坐呼吸という心不全の典型的な症状。また、いままで同じ動作をしても息切れしなかったのに、突然息が切れるようになった場合も、その疑いがあるため、迷わず病院を受診するべきだ。

 また、軽度な心不全でも不整脈などにより、めまいや、ふらつきで失神するケースがあるので、このような症状が出た場合は、まずは座り込むか横になり、改善しない場合は緊急性が高い可能性もあるので、救急要請を検討したほうがいいだろう。

 そんな急性心不全の原因とされるが、心臓疾患や、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病。そのため発症は心臓弁膜症などの病気の罹患率が高くなる65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。ただ、近年は喫煙や過度の飲酒、運動不足による肥満、そして塩分過多などで、30~40代の働き盛り世代でも、急性心不全を繰り返す患者数も増えている。

 日常生活において、心不全の予兆を知るチェック・ポイントは、先にあげた動悸や息切れ、胸痛、呼吸の苦しさほか、重要になるのが足のむくみだ。心臓に障害が起こると腎機能も低下する。結果、摂取した量と同量の水分や塩分を腎臓から排泄できなくなり、体の中に体液がたまる。そして生じるのが、足のむくみだ。

 この足のむくみは脛ずねに現れることが多いので、向こう脛の真ん中あたりを指で押すとへこんで、しばらく元に戻らない場合は要注意。また、体重が3日で2kg以上増えた場合も、腎機能低下により体の中に体液が溜まっている可能性があるため、早急に循環器内科を受診することをお勧めしたい。

 では、急性心不全対策として、日常生活で注意すべき点はあるのか。それが、ズバリ減塩だ。繰り返すが、心不全の主な原因は心臓疾患と生活習慣病。そのため、塩分の取りすぎは百害あって一利なし。特に高齢になると若い頃より運動不足になることに加え、どうしても腎臓機能も衰える。それにもかかわらず、若いころと同じ塩分量の食事をしていれば、当然、摂取した塩分が排泄できなくなる。

 加えて、いかに日常的に薬を服用していても、塩分摂取量が多いと薬の効果が半減するというデータもあるので、治療効果を求めるのであれば、まずは減塩を心がけることだ。目安は1日6g以下。ただ、心不全では処方されている治療薬により水分制限が必要になる場合もあるため、減塩と水分補給はきちんと医師の指導の下で行うように。心不全に不安がある人は、毎日のむくみ状況や体重変化を記録し、セルフケアしておくこともお勧めだ。

(健康ライター・浅野祐一)

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