時々、お金の相談を受ける。相談といっても「お金を貸してくれ」というものではない。相談する人もお金を借りたいのなら、誰に頼むのがいいかは知っている。その見立ては正しい。
相談の内容は「老後のお金がない。将来が不安で貯金をしたいけど、貯めるお金がない」というもの。
先日話を聞いた人は、奥さんに先立たれた独り者で、毎日節約して生活しているが、お金がなくて困っているという。まだ定年前で、元気で働いていて給料をもらっている。驚くような高給ではないが、薄給でもない。
どんな節約をしているのか聞いてみると、ビールは発泡酒。晩御飯はスーパーの閉店間際に2、3割引のシールが貼られた弁当。朝はコンビニのおにぎり2つと缶コーヒー。昼は安いのり弁当で、たまに安いランチ。仲のいい友人と会う時も、チェーンの安い居酒屋だという。しばらく家電や服を買っておらず、電気もこまめに消している。これだけ頑張ってもお金が貯まらないというのだ。
本人は安く暮らせるように頑張っているのかもしれないが、これではお金が貯まらない。なぜなら、3割引になった弁当や安いおにぎり、安い居酒屋で酒を飲んでいても、食事のほぼすべてが外食か中食(弁当や惣菜など調理済みの出来合いのものを買って食べること)ばかりだからだ。
例えば、弁当や外食での食材原価はせいぜい30%。光熱費や調理の手間、後片づけなどは面倒かもしれないが、自分で作れば食費は半分以下になるものだ。
もし、将来のお金が不安だと思うのなら、あれこれ悩む前に、好物を自分で調理できるようになってみてほしい。特に自分の好物は調理の基本ができるようになると、うまい味を知っているから微妙な味付けもできて、あっという間に上手に料理ができるようになる。そして、特に若い人に言っておきたいが、今は料理のできる男はモテる。これは間違いない。
調理をする時にやってはいけないのが、高い食材にこだわりすぎたり、調理が複雑で長時間必要な料理はお勧めしない。特に家族のいる人が「今日は俺がメシを作る」と言って高い食材を買ってきて、長時間、台所を占領して作ったりすると、妻に嫌われる。使った食器を洗ったり、調理中に台所を汚しても自分で後始末をしないからだ。
料理は材料集めから皿洗い、調理場の掃除までだと覚えておきたい。
相談者に「自分で料理を作ってみてください」と言ったら「無理です」という顔をされた。何も今日からすべてを料理してくださいなどと言ってない。
例えば、最近は家で揚げ物をする人が減った。脂が飛び散ったりするなど後片づけが大変だからだ。だからトンカツやコロッケ、天ぷらなどの総菜を買うのはいい。ただ、ごはんは自分で炊き、トマトやレタスを買ってきて、適当な大きさに切ってボウルに盛って生野菜サラダを作る。
つまり、最初からすべて作ろうとせず、少しずつ作るようにしてほしいのだ。すると、スーパーで肉を買ってきて、フライパンで焼いて焼肉のタレをかければ「焼肉弁当ぐらいなら自分でできるな」とわかるようになる。肉だけだと栄養のバランスが悪いので、ブロッコリーを買ってきて、鍋に水を少し入れてフタをして蒸したものを添える。
また、余ったごはんをおにぎりにすれば、昼にコンビニで買う必要がないことにも気づく。こうして、少しずつ料理ができるようになると、不思議とお金が貯まってくるものだ。
料理のできる男は、お金が貯まる。そして女にモテる。さらに、家族にも喜ばれるし、料理は頭も使うのでボケ防止にもなる。
老後のお金が心配な人は、体と頭が自由なうちに、料理のできる男になってもらいたい。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。