プーチンがウクライナ停戦交渉で目論む「東部併合」「3分割」を検証

 米国主導によるロシアとの停戦に向けた動きが活発化しているウクライナ。プーチン大統領が狙うのは東部の自国領への併合、もしくは親ロ国家の樹立だと言われている。

 ちなみに、14年の住民投票でウクライナからの離脱、ならびにロシア併合を一方的に決めたクリミア半島は、以降ロシアが実効支配。同地域の住民の6割はロシア系が占める。

 また、22年2月に侵攻を始めた東部もロシア系住民が多い地域。クリミア半島ほどではないが、トンバス地方(ドネツク州、ルハンスク州)では約4割を占め、ウクライナ系住民の数を大きく上回る。同年9月に現地の親ロ派武装組織が行った住民投票では、東部各州で併合支持が80~90%台だったと伝えられている。

「この結果の信憑性には疑問符が付きますが、住民の多くはロシア寄りなのは事実。過半数が併合を望んでいても不思議ではありません」(軍事ジャーナリスト)

 現在のウクライナ東部は、18世紀半ばにロシア帝国が併合した地域。ドンバス地方には欧州でも有数の規模の炭田があり、作業を担ったのは本土から移り住んだロシア系住民たち。それに合わせて農地の開拓も彼らが行い、そのまま今日に至るまで代々住んでいる。

 一方、首都キーウなどがある中部はウクライナ系住民が多く、これまでロシアに虐げられてきた歴史を持つ。そして、同じウクライナでもリヴィウなどがある西部は、もともとハプスブルグ家が支配していた地域。ゆえにロシアの影響力は薄い。

 こうした状況に加え、ウクライナは地域によって宗教上の対立も存在する。大枠では同じキリスト教だが、国民の多くが信仰するウクライナ正教は、18年にモスクワが総本山のロシア正教から独立する形で設立されたもの。これにロシア正教側は猛反発しており、東部のロシア系住民の多くは今も信仰している。

 ところが、24年8月にウクライナ議会はロシアと繋がりのある宗教団体の活動を禁止する法案を可決。これにより国内でのロシア正教が事実上の禁教となった。

「地域によって民族や歴史、宗教が異なるため、ロシアはこれを利用して国土を三分割しようというわけです。それによってウクライナの国力を落とし、最終的に親ロ政権を樹立させてロシアの支配圏に加えようと目論んでいるのでしょう」(同)

 この壮大なプーチン大統領の野望は果たして実現するのか? まずは今後の停戦協議の行方に注目だ。

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