締め出されたプーチンが意地の開催「反西側・歌唱コンテスト」に参加する国々

 年に一度、ヨーロッパの有名歌手らが一堂に介し開催される、「ユーロビジョンソングコンテスト」なる欧州最大級の国別対抗歌謡祭。

 昨年5月、スウェーデンのマルメで開催された同コンテストには、37カ国から国を代表するアーティストたちが参加し、スイス代表の歌手ネモが「The Code」を歌い優勝した。しかし、観客も各国から集まるため、イスラエルの参加に対し開催地周辺ではデモが勃発。会場の外では、パレスチナ解放や大会ボイコットを唱えるデモ集団と警官隊との睨み合いが続くなど、厳重な警戒態勢が敷かれるなかでの開催となった。音楽ジャーナリストが語る。

「この大会は1956年の第1回以降、毎年開催されている国際的音楽祭で、2015年には『最長寿年度テレビ音楽コンペティション(国際)』としてギネス世界記録に認定。歴代の優勝者にはABBAやマネスキンなど、日本でよく知られるアーティストも少なくない。24年のスイス代表歌手優勝は、1988年のセリーヌ・ディオン以降初の栄冠となりました。優勝者を輩出した国が次の開催国となるため、今年はスイスでの開催が予定されています」

 実はロシアも、94年の初参加以来、ウクライナ侵略が始まる前年の2021年までは、このコンテストの常連で、08年には優勝。翌09年大会はモスクワのオリンピックスタジアムで開催されている。そして参加最後の年、21年5月には、ロシア代表としてタジキスタン出身の女性アーティスト、マニシャが「Russian woman」を歌い、9位入賞を果たしている。

 しかし、22年2月のウクライナ侵攻を受け、ユーロビジョンを主催する欧州放送連合(EBU)が、ロシアの参加および放送を禁止。以降、ロシアは同コンテストから締め出しを食う形になった。

 ところが今年2月3日、プーチン大統領が突如、モスクワとその周辺地域で「国際的な文化および人道的協力の発展」を目的とした「インタービジョン」を開催することを定めた法令に署名したというニュースが報じられたのである。

「それによれば、すでに組織委員会の責任者には、ドミトリー・チェルニシェンコ副首相を任命。旧ソ連時代にも同盟国の間で同様のコンサートが開催されていたそうですが、今回は、主要新興国で構成するBRICSおよび旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体(CIS)の全加盟国を含む20か国が参加予定だと伝えられています」(国際部記者)

 大統領令にはコンテストの開催日は記載されていないものの、国営タス通信などによれば25年9月が有力とされ、開催に向け関係各国に参加を働きかけているという。

「プーチン氏自身は、このコンテストの目的を『国際的な文化・人道的協力の発展』としていますが、間違っても非友好国からの参加はありえない。となると、せいぜいBRICSに加盟しているインドや中国、ブラジル、南アフリカ、イラン、エジプトなどの10か国に加え、ベラルーシやアルメニアといった同盟国の参加で終わるのではないかとも思われますが、当然、蜜月関係にある北朝鮮からは有名歌手が参加するはず。まさにユーロビジョンに対抗した〝反西側歌唱コンテスト”となるはずです」(同)

 ちなみに、ユーロビジョンのグランドフィナーレでは、決勝に進出したアーティストとフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の「ビッグ5」および開催国のアーティストが競い合い大会を盛り上げるのだが、「反西側歌唱コンテスト」では、ロシアや北朝鮮、中国のアーティストのより、どんなパフォーマンスが繰り広げられるのだろうか。

(灯倫太郎)

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