宅配ピザチェーンといえば、1000店舗以上を展開する業界1位の「ドミノ・ピザ」をはじめ、「ピザハット」「ピザーラ」の大手3チェーンが圧倒的なシェアを誇る。だが、その陰で北海道・東北・新潟・北陸・南九州と首都圏や関西圏を避ける形で展開する「10.4(テンフォー)」というピザチェーンが存在する。
現在は79店舗あり、業界の店舗数ランキングでは「ナポリの窯」に次ぐ5位。ただし、地方だからといって県庁所在地などの大きな街ばかりに出店しているわけではない。ピザチェーンとしては唯一、日本最北端の稚内、最東端の根室にも店を構え、さらに店舗のある自治体の人口を調べると、1万後半から2万人台のところが少なくない。
「テンフォーは意図的にそういった地域に進出しています。一種の逆張り戦略ですが、3大チェーンは出店を控える傾向が強いため競争相手が少ないことをチャンスと捉えているようです」(飲食コンサルタント)
宅配ピザの場合、一般的な配達エリアは都市部で2キロ。それ以外の地域でも上限はせいぜい5キロ程度。だが、テンフォーの場合、最大10キロの広域配達を行っている店舗もある。つまり、そうすることで潜在顧客数を増やし、人口の少ない地域での事業を成立させているのだろう。
「当然、配達先が遠ければ時間がかかり、輸送にかかるコストもばかにできません。ですが同社は北海道の企業ですし、最初から織り込み済みなのでしょう」(同)
しかしながら地方だと人手を確保するのも大変だ。宅配ピザの場合、従業員の多くは若いアルバイト。高齢化が進んでいるので募集しても集まらなさそうだが、この点も大きな障害にはなっていないという。
「年配の方を積極的に採用しているそうです。最近はファストフード業界やコンビニ業界でも高齢のスタッフは増えていますし、年を取ってもまだまだ元気で働きたいという人は少なくありません。地方でもそういう人材には困らないはずです」(同)
特に飲食ビジネスの場合、チェーン展開すると大都市圏に目が向きがちだが、それだけが正解ではないのだ。