6人の指名選手のうち、5人が高校生。しかも、その全員が甲子園大会に出場している。
「地方にわざわざ行かなくても、自分のところ(本拠地)の球場を見ていればいいんだから。阪神はスカウトがいなくてもいいよな(笑)」
ドラフト会議後、そんな冗談も聞かれたが、矢野燿大監督は間違いなく、男を上げたようだ。
高校生中心のドラフト、球団の育成にかける姿勢が垣間見え、虎ファンは再び甲子園に立つ選手を期待して待つことができる。
しかし矢野監督が在任中に、彼ら高校球児たちが一軍昇格できる保証はない。それでも、高校生中心のドラフトを受け入れたのだから、矢野監督は目先の私欲を捨て、トラの未来を見据えていたわけだ。
「クライマックスシリーズ進出が決定する前のシーズン途中で、フロントは矢野監督の続投を発表しています。1年で解任となることは考えにくいとはいえ、フロントが信頼を寄せていることは間違いありません」(ベテラン記者)
矢野監督は自身の任期中に活躍を見ることができないかもしれない高校生中心のドラフトを容認したことで、フロント幹部も申し訳なさを感じているという。
「その見返りではありませんが、今オフ、大物外国人選手の獲得が予定されているそうです」(同前)
それでも近年、クリーンアップを予定して獲得した外国人選手は、全て失敗に終わっている。未知数の助っ人に頼って失敗するくらいなら、伸び悩んでいる中堅どころを起用したほうが「計算も立つ」というのが、矢野監督の本音とも言われている。
大物助っ人の獲得を辞退したら、矢野監督はそれでまたオトコを上げることになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)