ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアは11月11日、次期トランプ政権が国務長官にフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員を指名する方向で調整に入ったと報じた。ルビオ氏は中国の人権問題を強く非難するなど対中強硬派として知られ、台湾を支援する姿勢を打ち出してきた共和党の若手のホープ。今回の大統領選挙でも一時、トランプ氏の副大統領候補として名前が挙がっていた。
また、国家安全保障会議を束ねる安全保障政策担当の大統領補佐官として名前が挙がっているマイク・ウォルツ下院議員も、陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」出身の元軍人で対中強硬派。これまでも中国軍に対抗するためアメリカ海軍の艦船や装備増強を主張してきた人物だけに、いよいよトランプ政権による中国への締め付けが厳しくなることが予想される。
一方、トランプ氏再選を受け国の習近平主席は7日、トランプ氏に対し「中米が協力すれば双方の利益となり、戦えばいずれも傷つくと歴史が示している」といった内容の祝電を送ったとされる。ただし習氏の場合、世界中どの国でも当選した首脳には祝電を送る慣例があるため、儀礼的なものであると思われ、その文言からは本音を読み取ることはできない。それでも、少なくとも対話の余地を残した円満キャラをアピールしていることは間違いなさそうだ。
周知にようにトランプ氏は次期大統領就任後、米国に輸入される中国製品に60%と、1期目の政権時に発動した7.5~25%よりずっと高い関税を課すと約束している。そのため大統領選の期間中から中国企業の東南アジアへの工場移転が相次ぎ、この流れがさらに加速するとみられる。
「しかし、それでもなお習主席はハリス氏よりトランプ氏のほうがよかったのではないか。理由は、自国さえよくなれば他国干渉はしないという、トランプ氏の徹底したビジネスマン的志向にある」(国際部記者)
アメリカにはNED(全米民主主義基金)という民主化運動のための支援金を拠出する機関があり、これはもともと旧ソ連を崩壊させることが最大の目標だった。しかしソ連の崩壊によってターゲットが中国に移り、その支援金が香港やチベット、さらには台湾の対中国対策に回されることになった。
「しかもNEDのバックにいるのがバイデン氏やハリス氏のいる民主党で、戦争ビジネスとも深くかかわりあっている。一方、トランプ氏は『NATOなど要らない!』と主張するほど戦争ビジネスとは無縁の人物なので、自分の国さえよければ、他国干渉をするつもりもない。つまり、中国としてはたとえ関税を上げられようが、交渉次第で戦争につながることはないと踏んでいる。となると、やはりハリス氏よりトランプ氏相手の方がやりすいというわけです」(同)
様々な思惑が交錯する米中関係。トランプ氏の大統領就任まで、あと2カ月に迫っている。
(灯倫太郎)