現在もなお、小規模な衝突やテロ事件が絶えないインドとパキスタン。そんなパキスタンがこのほど、中国製の第5世代ステルス戦闘機を40機も購入したとの報道を受け、敵対するインドだけでなく西側諸国の間からも驚きの声が上がったという。
12月22日の香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によれば、パキスタン空軍(PAF)は先週、中国から「殲35」(J35)を40機購入。2年以内の引き渡しが予定されているという。
「しかし現在、パキスタン空軍が運用しているのは、米国の戦闘機F16とフランスの戦闘機ミラージュなど。ただ、近年はかなり老朽化していたことから、再び西側に受注をかけるのでは、と思われていたようです。パキスタン空軍にとっても戦闘機は攻撃の要ですからね。それを中国に受注したことで、米国や西側にも衝撃が走ったようです」(外報部記者)
中国が第5世代のステルス戦闘機を輸出するのは、今回のパキスタンが初めてというが、「殲35」は、11月に中国南部の珠海で開催された国内最大の航空ショーでお披露目された最新兵器の一つ。軍の近代化を押し進め、アジアでの軍事的存在感を示したい中国政府としては、この航空ショーをきっかけに海外輸出を拡大させたい思惑があった。と同時に、最新鋭兵器を披露することで、米国に匹敵する水準にあることを誇示することができる。そのひとつが、第5世代の最新ステルス戦闘機「殲35」だったようだ。
「殲35」は、中国軍が2017年に運用を開始した「J20」に次ぐ2機目のステルス戦闘機。外観は米国製のF35を思わせるものの、ターボファンエンジン1基搭載のF35に対し2基のエンジンを装備しており、最大離陸重量は30トン。空中戦だけでなく、地上や海上の標的に対する精密爆撃も可能な新世代の中型ステルス戦闘機だという。
パキスタンは少なくとも2年以内に、そんな中国製最新兵兵器を40機輸入することになるわけだが、当然、危機感を募らせるのがライバル国であるインドだ。
1947年に始まったインドとパキスタンとによる戦争は、65年9月には第二次印パ戦争に拡大。しかし国際社会の圧力により「停戦ライン」を敷くことになり、カシミールの国境が定まった。だが、カシミール地域の支配を巡り両国の対立は続き、74年にはインドが核保有を宣言。98年にはパキスタンもこれに対抗する形で核開発を行い、核を保有することになったのはよく知られる話だ。そんなインドとパキスタン、両国の対立に大きな影響を与えてきたのが中国で、長年にわたり友好関係にあるパキスタンに対し軍事面や経済面で多大な支援を行ってきたとされる。
「中国とインドは62年の中印戦争が勃発以降、現在もヒマラヤ地方で国境紛争を繰り広げています。そのため、中国としてもインドを牽制するため、パキスタンとの関係は強化していおきたい。加えて、中国が推し進めるアジアとヨーロッパを結ぶ巨大経済圏『一帯一路』構想においてもパキスタンは陸路の重要拠点となるため、協力関係を強化しておきたい。今回のステルス戦闘機の大量受注もそんな両国の蜜月関係を物語っているようです」(同)
軍事専門家によれば、J35戦闘機がパキスタンに引き渡されれば、パキスタン空軍の戦力が強化されることは必至で、インドとのパワーバランスに変化が現れる可能性もあるという。インドを威嚇するための材料なのか、あるいは本気でインド攻撃を視野に入れた購入なのか。アジア諸国の間に緊張感が走っている。
(灯倫太郎)