カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールの受賞。米アカデミー賞でも作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞した韓国のブラック・コメディ映画「パラサイト 半地下の家族」(2019年公開)
同作は半地下の部屋で暮らす全員失業中の家族が、大豪邸で暮らす一家を巧みにだまし、家族全員でその家に「寄生」していくという物語だが、中国では今、自身が売却した住宅の地下室に7年間にわたって隠れて住んでいたという、とんでもない元家主がいたことが発覚。SNS上で「中国版リアル・パラサイト家主」として話題になっている。
2月2日、事件を報じた中国網易ニュースによれば、現在の所有者が市内中心街にある邸宅を約200万元(約4283億円)で購入したのは2018年のこと。以来何事もなく暮らしてきたのだが、最近家の中を整理している際、階段の奥に隠された扉を発見。不審に思い扉を開けてみると、なんとそこには地下室につながる階段があり、地下には換気システムや照明が備わった広い部屋があり、驚くなかれミニバーまで備えつけられていたというのだ。
「驚いた家主が不動産屋を通じ、以前の家主である女性に連絡したそうなのですが、その女性は詫びるどころか、『たしかに家は売ったが、地下室が含まれるとは言ったことがない』と憤慨したのだとか。しかも言うにことかえて、地下室は自分が休養のために使っている空間で、登録された不動産や売買契約書の一部ではない、と主張したしたというんです」(中国ウォッチャー)
つまり、彼女は家を売却後7年にわたり、たびたび地下室に忍び込んでは自分の時間を満喫していたことになるわけだが、このニュースにSNS上では《この女はどうやって地下室に出入りしていたんだ?》《7年も知らない人間が地下で過ごしていたなんて、想像しただけでも鳥肌が立つ》等々、非難の声が続出したことは言うまでもない。
騒動発覚後、現在の家主は裁判所に訴訟を起こし、裁判所は「地下室の所有権は当然、現家主にある」とし、女性に金銭的賠償を命じているろされるが、現時点で支払いがなされたかどうかは不明だ。
「実は、中国では2010年8月の映画祭で映画『パラサイト 半地下の家族』が当局の検閲にひっかかり、突然上映中止になる騒ぎが起こったことがあるんです。時期でいえばちょうどカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したあとで、中国西北部靑海省の省都、西寧市で開催される映画祭の閉幕式で目玉として同作の上映が予定されていたのですが、突如、『技術的な理由』で中止になった。しかも主催者側からは一切詳細が発表されずじまいで、会場はブーイングの嵐だったようです。ただ、中国では貧富の格差を描くような作品は、当局の検閲に抵触しやすい。過去にもそういった作品はおおよそ『技術的な理由』で上映中止になっていますからね。しかも国内では、成人して生活能力があるにもかかわらず、親元を離れることができない『傍老族』が『パラサイト族』と呼ばれ社会問題化しているタイミングだった。そんな背景もあり、今回のパラサイト騒動で、再び『傍老族』がクローズアップされないか、当局も目を光らせているのではないでしょうか」(同)
パラサイトという文言に対し過度なほどに敏感になっているとされる中国政府当局。さて、今回のリアル・パラサイト家主騒動の顛末はいかに。
(灯倫太郎)