【中国】見せしめの摘発もムダに終わる「違法人体ビジネス」の深すぎる闇

 1979年に「一人っ子政策」をスタートさせた中国が、深刻化する高齢化や労働人口減を理由に、同政策を廃止したのは2015年のこと。しかし、17年以降も出生率は下げ止まらず、中国国家統計局の発表によれば23年末時点の人口は14億900万人。前年から208万人減しており、このまま推移していけば50年までに1億人減少。60年までには6億人減ると見られている。

 そんな中、いま中国で急増しているのが“代理出産”だ。ただ、中国では基本、代理出産が禁じられているため、これまでは海外で行われるケースがほとんどだった。

 中国事情に詳しいジャーナリストが語る。

「特に需要が多いのはアメリカで、アメリカの連邦法には代理母に関する規制がないことから、ネブラスカ州やミシガン州、ルイジアナ州以外の州では現在も合法。そのため、年間少なくとも数百件以上、中国人からのオファーで代理出産が行われていると言われています」

 アメリカで生まれた子供は法律で自動的に国籍が与えられることもあり、出産後、本国に連れ帰った場合はアメリカ国籍を維持できるため、ブームに拍車をかけてきたとされている。しかし、当然のことながら費用は数千万円だけに、中国でも一部富裕層にしか利用できないものとされてきた。

 ところが、そんな代理出産ビジネスが近年、本国でも秘密裏に横行していることが問題視され、その1社が当局に摘発されたことで大きな波紋が広げているという。

 8月26日の「中国河南テレビ」報道によると、今回摘発を受けたのは、中国山東省青島のバイオ関連企業。報道によれば、同社は自動車貿易商店街の地下に大規模な代理母実験室を持ち、秘密裏に代理母事業を展開してきたというのだ。

「この会社はバイオ関連企業の看板を掲げる従業員5~6人規模の小さな会社ですが、事業実態はなく、代わりにSNSを通じて顧客と代理母志願者をマッチングさせ、その見返りとして一人当たり75万人民元(約1500万円)を受け取り、子供の性別を指定するクライアントからは追加で20万人民元を受け取っていたとされています」(同)

 報道を受け、青島市衛生健康委員会は「公安などの部署との合同調査チームで、関連事案を調査中。法規により厳重に処理する」とコメントしているが、闇市場が大盛況だとされることから、今回の摘発は当局による見せしめだという見方が濃厚だ。

「海外で2000万円、3000万円の費用が掛かる代理出産も、国内であればその半額、または3分の1程度とあって需要があっという間に広がったようですが、実は中国ではコロナ禍以降、非合法な臓器移植や卵子提供、売血ビジネスなどが以前にも増して横行するようになった。その証拠に、地方都市の公衆トイレなどにはごく普通に『卵子提供 10日で1万~5万元(約15万~75万円)』『代理出産15~25万元代理出産(約230万~380万円)』などと書かれた張り紙が携帯電話番号付きで貼られています。さらにSNS上では『血液400ccに500元(約7500円)を払う』とした書き込みが連日アップされ、コロナ禍で仕事を失った人々が背に腹を変えられず利用しているとの話も聞いています」(同)

 むろん、中国でも血液の売買は禁じられているが、医療現場では輸血用血液不足が慢性化。そこに目をつけた売血ブローカーが暗躍しているわけだが、代理出産しかり、卵子提供しかり、それら中国での違法人体ビジネスが、一人っ子政策によるひずみと経済停滞から生まれたことは間違いない。となれば、いかに見せしめで当局が検挙したところで、根本的解決にはほど遠いといった感は否まない。そして、それが今、中国が直面している大問題ということだ。

(灯倫太郎)

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