イラン大統領死亡に「アメリカの経済制裁が原因」しゃしゃり出るロシアのセコさ

 5月19日、イランでヘリコプターが墜落し、ライシ大統領などが死亡した事故。ライシ大統領は同国北西部のアゼルバイジャン州でダムの竣工式を終えタブリーズに向かう途中、山岳地帯でヘリが何らかのアクシデントにより墜落。イラン政府は同日、ライシ大統領のほか、同乗していたアブドラヒアン外相、東アゼルバイジャン州知事らも全員死亡したと発表した。

「22日に軍と革命防衛隊による調査チームが発表した報告書によれば、当初原因である可能性が指摘されていた濃霧の影響ではなく、パイロットが分厚い雲の中で『視界ゼロ』に陥り、雲から抜け出そうと高度を上げ、山に激突したとみられています。ただ、これは初期段階の報告書なので、詳細は今後徐々に明らかになるでしょう」(外報部記者)

 当日は事前に悪天候の予報が出ていたが、大統領本人の指示なのか、あるいは側近による手配なのかはわからないが、結局、予定を優先し飛行を決断した中での事故となったようだ。

 今回墜落したヘリは、アメリカ製のヘリコプター「ベル212」で、陸上自衛隊も使用しているUH-1型系列に連なる汎用の中型ヘリコプターだが、報道によれば、イランで使われていたのは、1960年代設計の旧式機だという。

「ベル212は1968年から1998年まで製造が続けられた2枚ローターの双発機。イランが使用しているのは米国との関係が悪化した1978年以前に導入された機体だとされ、そう考えると単純計算しても製造後約50年が経過していることになります。ただ、航空機の世界では、50年、60年前の機体が使われることは珍しいことではない。その証拠に1978年製であるアメリカ大統領専用ヘリコプター『VH-3D』も現役で飛び続けています。なので、きちんと整備していれば、何ら問題なく飛び続けられるはずなんです」(軍事ジャーナリスト)

 今回の墜落事故が報じられると、イランのザリフ元外相やロシアのラブロフ外相らは、さっそく「経済制裁で修理部品が調達できなかったせいだ」「制裁で古い機材を使い続けなければいけなかったせいだ」と騒ぎ立て、アメリカ制裁原因説を主張。しだいに、そんなコメントが独り歩きしているが…。

「100歩譲って、仮に経済制裁で正規ルートにより整備用部品の調達が難しかったとしても、現在のイランの技術力をもってすれば機体の維持は可能なはず。さらに、制裁によりアメリカ製やヨーロッパ製のヘリコプターが入手できないのなら、ロシア製や中国製のヘリコプターを購入すればいいだけの話。そうせずに、アメリカ製のヘリを乗り続けたのは、やはり性能を重視したからでしょう。しかも、今回の事故原因は経年劣化というより、おそらくは悪天候の中、スケジュールを優先したがゆえに起こった可能性が高いのではないか。いずれにせよ調査中の現段階において、ラブロフ外相などが喧伝する『アメリカ制裁原因説』は全くのデタラメだということです」(同)

 他国の事故までプロバガンダに利用するとは、ロシアによる相変わらずの難癖には呆れるばかりである。

(灯倫太郎)

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