プーチン大統領5期目突入で腹心逮捕のショイグ国防相が震える“ドス黒い権力闘争”

 3月のロシア大統領選で、87%という圧倒的得票率で大統領5期目が確定したプーチン氏が5月7日、クレムリン宮のアンドレエフスキーホールで就任式に臨んだ。新たな任期は6年だが、プーチン氏は2020年に憲法を改正したため、30年の大統領選挙への出馬が可能。仮にそこで勝利した場合、12年後の2036年まで政権を握ることになる。

 大統領就任式の演説でプーチン氏は、3年目に突入したウクライナ侵略を改めて正当化。同時に最終的な目標達成まで、現在の軍事作戦継続の意思を表明した。とはいえ、かねてから就任式欠席を表明していた米国や英国、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランドといった欧州連合(EU)駐露代表部の姿はなく、ロシアと西側との関係悪化が改めて浮き彫りとなる形になった。

 一方、実は就任を控えた4月、ロシア国内では衝撃的なニュースが流れた。プーチン氏の側近・ショイグ国防相の腹心としてウクライナ侵攻を担ってきた国防次官のイワノフ氏が、多額の賄賂を受け取った疑いで4月23日、勤務中に逮捕されたというショッキングな報道だった。国際部記者が説明する。

「イワノフ氏は、2012年にショイグ氏がモスクワ州知事に就任した当初からの側近で、同氏に一番近い立場にあるとされてきた人物。実は、獄中で亡くなったナワリヌイ氏を中心としたチームも、イワノフ氏には汚職の疑惑があるとして、以前から調査動画などをアップし糾弾してきましたが、ショイグ氏の後ろ盾もあって逮捕されることはなかった。それが、プーチン氏の大統領就任を前に、突然逮捕されたわけですからね」

 そのため、ロシア中枢の権力闘争の中で何かがあったことは間違いないと見られているのだ。

「ロシアの独立系メディアでは、この逮捕は表向き『収賄容疑』となっているものの、実は反逆罪の可能性がある、と報じています。というのも、実際クレムリンの中でイワノフ氏の汚職を知らないものはいなかったようで、それを野放しにしていたということ。大統領就任式前に『反逆事件』が明るみに出たとなれば一大事。そこで、プーチン氏が自ら事前に逮捕命令を出した、との報道もあります」(同)

 それが事実だとすれば、ショイグ氏が長年に渡り築き上げてきたプーチン氏との蜜月関係にも多大な影響を及ぼすことは必至だ。

「腹心の逮捕がショイグ氏に与えたダメージは相当なものでしょうが、逆にプーチン氏としては『おかしな動きをすれば次はお前だぞ!』というショイグ氏への脅しになったはず。いつ誰に寝首を掻かれるからない独裁者にとっては、ナンバー2も3も関係ない。これまでどんな関係を築いてこようが、少しでもおかしなそぶりが見えれば、一刀両断のもとに斬り捨てる。つまり、ショイグ氏が、このまま国防相に収まっていられるかどうかも、プーチン氏の胸先三寸にかかっているということです」(同)

 プーチン氏は就任式後、次期首相を選定。下院に承認を求め、承認された次期首相が組閣を行うことになるが、外相や国防相といった重要閣僚については、プーチン氏と上院とで協議して決めることになっているが、はたして腹心逮捕で、ショイグ氏留任の行方は…。

(灯倫太郎)

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