【国籍洗浄】中国スパイが「カンボジア人」に化けて潜入している!(2)中華料理店が「秘密警察」の拠点に

 当初、「コロナ禍で帰国できない同胞のために運転免許更新を行っていた」と言い訳をしていたというが、これだけでも甚だしい主権侵害に当たる。だが、事態はより深刻だ。週刊新潮(22年11月17日号)が、自民党の松下新平参議院議員が同団体の「高級顧問」になり、書類送検された女性幹部が松下議員の「外交顧問兼外交秘書」に収まり、議員会館に出入りしていたことなどを報じている。また、現役の外事関係者はこんな証言を寄せたのである。

「日本に海外警察が設けられたのは聯合総会設立のはるか以前、2010年のことだ。この年、中国で国防動員法が施行、それに合わせて設置されたというのが日米の共通認識だ」

 国防動員法とは、国内ばかりか国外にも効力を及ぼす数々の法令を束ねた膨大な権限を持つものであり、その中には、敵国に対する政治工作のための動員令や実務規定などが含まれているが、そのために警察権を利用するのはやや違和感がある。その点を質すと、こんな答えが返ってきた。

「海外警察の役割は2つある。1つは、工作員の拠点としての機能。もう1つは、在外中国人に対する行政サービスや監視を含めた活動を行うための機能だ。聯合総会は後者に力点を置いて表の看板を持つ組織だが、前者の機能をフルに果たしているのは、秘密の海外警察だ。実は日本の全都道府県に配置されている」(外事関係者)

 その「秘密警察」は当然ながら、外見から見破ることは容易ではない。

「太極拳教室とか、健康や結婚の相談所、ごく普通の中華料理店などが秘密の海外警察に指定されている。日本全土を網羅する形になっており、そこを拠点に工作員が活動している」

 外事関係者はそう解説し、今問題にされているのは氷山の一角だと警鐘を鳴らしたのである。

 こうしたことを踏まえ、警視庁公安部は23年5月、聯合総会を家宅捜索。数々の資料を押収し、活動実態の解明に努めたという。

「結果、問題視された女性幹部が大物工作員であることが判明。カンボジア国籍に偽装したAとのコンタクトが確認されたのだ。で、このまま放置しておくわけにはいかないと、押収資料から、併設する風俗店を整体院と称して、新型コロナウイルス対策の持続化給付金100万円をだまし取っていた件を取り上げ、立件した」

 公安関係者は、そう明かした上で、さらに続けた。

「米国はAやBの工作について、『中南海が指揮を執っている肝煎りの工作だ』と明言している。『中南海』は、中国共産党中枢を指す言葉。その工作となると、党中央委員会、あるいは、その情報機関たる中央統一戦線工作部を意味していると考えがちだが、実は、この工作については、それよりも上が関与している。習近平総書記の秘書室たる弁公室、さらに言えば、『セクレタリー・チーム』と米国が名づけた極秘の秘書室が指揮していると米国は見ている。このチームは総書記の密命を遂行するグループ。換言すれば、総書記自身の工作とも言える。そもそもBに指令を伝える中国系大手企業は、総書記直轄の扱いであり、党中央委員会の指揮下、政治協商会議がコントロールしている企業群とは一線を画している。そういったことも踏まえての分析だ」

 工作員の身元擬装に国家トップがかかわっているということなのだろうか‥‥。公安当局は現在、カンボジア国籍に転じた中国人工作員のさらなる特定に注力しているという。

時任兼作(ジャーナリスト)

「週刊アサヒ芸能」4月25日号掲載

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