闇バイト逮捕者を待ち受ける「生涯反社扱い」(3)銀行口座も開設できなくなる

 デジタルタトゥーとは、体にタトゥーを入れると容易に消せなくなるように、ネット上に拡散された個人情報の削除が難しくなることを指す。

 この問題に関して質問した藤原氏は、法務省から以下の回答を得たという。

「インターネット上の特定の者の前科前歴に関する情報が、その者の権利を不当に制約し、または、その者の改善更生を阻害することはあってはならないと考えます。インターネット上の前科前歴に関する情報が人権侵害にあたると相談を受けた場合には、相談者の意向に応じ、削除依頼の方法を助言したり、プロバイダー等に対して削除要請などの対応を行っている」

 こうした取り組みも、世間に広く知られていないと意味をなさない。藤原氏は周知に努力するようにお願いしたという。

 また、先にも触れた闇バイト加担者が捕まった末、ヤクザ者と同様に銀行口座すら開設できなくなるというのも由々しき事態だ。

「闇バイトで逮捕・起訴された人は、銀行のコンプライアンスに抵触しますから、預貯金口座を持てなくなる可能性が高いのです。銀行は民間企業ですから、契約自由の原則を持ち出されると、どうしようもない。しかし現代社会において、銀行口座が持てないということは、就職や様々な契約をする上で、大きなハンデとなります。そうなれば、彼らはまた犯罪に手を出してしまう。つまり再犯の可能性を高め、被害者を再生産するという悪循環が生まれてしまうのです」(藤原氏)

 安直な動機で犯罪に手を染めた結果、「生涯反社扱い」という、八方塞がりの状況すら想定されるのだ。

「この預貯金口座問題は、昨年4月に法務省と金融庁が、一定の保護観察対象者について預貯金口座の開設支援を行う旨の周知依頼をしています。この成果を法務委員会で尋ねたところ、令和6年4月1日から7年1月28日までの間に、本支援策により口座開設に至った例はないとのことでした。今後、口座開設支援の成果を、法務委員として注視していくつもりです」(藤原氏)

 必死でドロップアウト組の社会復帰支援を働きかけても、問題解決は遅々として進まないのが現実である。

 先に証言した闇バイトに従事した若者たちも、多くは語らなかったが、たとえ猛省した者でも「犯歴」の呪縛からは逃れられず、穏やかな生活を手に入れることすら困難なようだった。

 闇バイトに手を出すリスクをご理解していただけたであろうか。相場よりも高めのバイト代に目がくらむ前に、せめて、募集している会社に固定電話の窓口があるかを確認するなど、ひと手間かけてほしいものだ。

フリーライター・丸野裕行

*週刊アサヒ芸能5月22日号掲載

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