現在、フランスでは、同国の国民的俳優を巡り、上を下への大騒ぎになっている。
その俳優とは、170本を超える映画に出演し、1990年には仏カンヌ映画祭、翌91年にはセザール賞で主演男優賞に選ばれるなど、フランスを代表する名優として知られる75歳のジェラール・ドパルデューだ。だが、彼はその言動についてのお騒がせぶりも有名で、
「私生活では結婚と離婚を繰り返し、本妻と愛人の間に子供は4人。離陸直前の機内でワインボトルに小水してフライトを遅らせる事件を起こしたり、車の接触事故を起こした相手にカッとなって手を出して起訴されるなど、常に芸能マスコミに話題を提供してくれるスキャンダル俳優としても名を馳せていました」(映画ライター)
そんなスキャンダルの帝王が、パリの自宅で、知り合いの20代の女優に対し性的暴行を加えた疑いで起訴されたのは2020年末のこと。その後も、ドパルデューから性的暴行を受けたという女性の告発が相次いだ。
「さらに、2018年には北朝鮮政権樹立70周年『9・9節』行事で北朝鮮を訪問した際には、10歳の少女に対し、女性通訳を通じて『私は屹立しないで体重が124キロだ。屹立すれば126キロ』『私はズボンの中に大黒柱がある』などとセクハラ発言を行ったことがメディアのカメラに捉えられました。フランス公営放送『フランス2』が、被害女性たちの証言を集めた1時間15分のドキュメンタリー番組を放映するなど、フランスでは連日、大きく報じられ、国民の関心を集めていたんです」(前出・ライター)
そんな中、フランスを代表する女優、ソフィー・マルソーが仏週刊誌「パリ・マッチ」のインタビューで重い口を開いたとして、大きな話題になっている。前出のライターが続ける。
「ソフィーは1980年に映画『ラ・ブーム』で、世界にその名を馳せた後、数々の名作に出演しています。現在もフランスでは最も愛されている俳優の1人ですが、彼女がドパルデューと初めて共演したのは、1984年の映画『ソフィー・マルソーの刑事物語(別題:ポリス、Police)』。ただ、この作品は邦題こそ『ソフィー~』ですが、実際の主演は刑事役のドパルデューで、彼はこの映画で1985年のヴェネツィア映画祭最優秀男優賞を受賞しているんです」
2人はこの作品で年の離れた恋人を演じているが、ソフィーはインタビューで撮影時のドパルデューの態度を『粗野で不適切で、女優ではなく、地位が低いアシスタントを標的にしていた』として『下品な挑発が常とう手段だった』と赤裸々に暴露している。
「当時、ドパルデューの横暴な態度に耐えられないと感じたソフィーは、周囲のスタッフに相談したようなのですが、『多くの人に反発され、邪魔者扱いされた』と語っています。つまり、当時からすでに周囲のスタッフの中には、国民的俳優とされるドパルデューを前に、モノが言える人間がいなかったということでしょう。結果、それがドパルデューのセクハラを常習化させる要因になってしまったのかもしれません」(前出・ライター)
ソフィー・マルソーをも怒らせたフランスのレジェンド俳優の横暴ぶり。数々の性的事件が今後どんな展開を見せるのか、フランス国民ならずとも大いに気になるのである。
(灯倫太郎)