1980年公開の映画「終電車」でデビュー後、フランス国内で数々の名作に出演。ハリウッドに進出した1991年には「シラノ・ド・ベルジュラック」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、ゴールデン・グローブ賞を受賞するなど、フランスでもっとも有名な実力派俳優の1人として知られるのが、ジェラール・ドパルデュー(74)だ。
ただ、俳優としての実力は群を抜く一方、私生活での破天荒ぶりもつとに有名で、1971年に女優のエリザベート・ギニョと結婚、2人の子供をもうけるも、女優カリーヌ・シラとの間にも女児が誕生。離婚後、1997年に女優のキャロル・ブーケと再婚したが、2005年に離婚。翌2006年にはフランス人女性との間に男児が誕生するという種馬ぶりで、常にマスコミを賑わせてきた。
「彼の場合、女性問題に限らず周囲とのトラブルも枚挙にいとまがない。2011年には離陸直前の飛行機で空のワインボトルに小水してボトルからあふれ出し、清掃のためフライトが遅れる事件を起こしています。また、翌12年にはスクーターを走行中、バイク運転手と接触事故を起こし、言い争いになり相手の顔面を殴って起訴されたこともあります」(映画ライター)
さらに、フランス国境に近いベルギー領に家を購入し移住したことを、当時のエロー首相から「税金逃れ」と非難されたことに反発。かねてから親交のあったプーチン大統領に願い出てロシア国籍を申請。2013年1月には申請が受諾され、現在はロシア国籍として俳優活動を続けているというから、その破天荒ぶりには舌を巻くばかりだ。
ところがそんなドパルデューが、北朝鮮樹立70周年「9・9節」行事に招かれて現地を訪れた2018年、なんと10歳女児に対するセクハラ発言をしていたことを、12月7日のフランス公営放送「フランス2」が報道し、世界中の映画ファンに波紋が広がっているのだ。
問題のシーンは、同局が製作したドパルデューの性犯罪を暴く約1時間15分のドキュメンタリー番組の中で紹介されたもので、平壌を訪れたドパルデューが、女性通訳に対し「私はズボンの中に大黒柱がある」「私は屹立しないで体重が124キロだ。屹立すれば126キロ」とセクハラ発言を繰り返し、それがフランスのメディアのカメラに収められていたのだ。
「むろん、ドパルデューもカメラが回っていることは承知で発言しているわけですから、悪質というほかない。実はドパルデューは2018年に20代の女優に対する性的暴行の容疑で検察の取り調べを受け、一度は証拠不十分で釈放されたものの、証拠が出てきてことで2020年から再捜査が始まり、現在も捜査は進行中なんです。ドパルデューから性犯罪を受けたという証言はほかにも多数あり、番組では女性たちや映画関係者の証言をもとに、ドパルデューが『国民的俳優』という権威をかざしていかに好き放題やってきたか、また彼の回りが見て見ぬふりをしてきたかを検証しています。フランスと北朝鮮との間に国交はありませんから、ドパルデューが平壌を訪問できたのは、おそらくロシア国籍だからでしょう。彼の国籍取得申請を許可したプーチンも今ごろは苦々しく思っていることでしょうね」(同)
報道が事実なら「国民的俳優」どころか「国民の恥さらし」といったところだが、どこぞの国でも権威をかざして性暴力を繰り返したまま、説明責任も果たさず旅立った男がいたが、ドパルデューにはなんとしても説明責任を果たさせるべく追及してほしい。
(灯倫太郎)