韓国の大手パネルメーカーのLGディスプレーが、高純度フッ化水素の国産代替に成功したことを、現地の「毎日経済新聞」が報じたが、日本では懐疑的な見方が広がっている。
「フッ化水素は、半導体の回路形成やディスプレーの洗浄工程などに使用されており、半導体に用いられる高純度のものは日本メーカーがシェアの8割を握っている。韓国はこれまで日本や中国からの輸入に頼ってきましたが、今年7月に日本が輸出管理を強化し、いわゆる“ホワイト国”から外したことから、国産代替を急ピッチで進めてきました。今回の報道が事実であれば想像以上に早く生産を可能にした印象ですが、LGディスプレーの広報担当が韓国紙の取材に応じていないとのことで、事実関係はまだよく分かっていないようです」(社会部記者)
そうしたことから、日本でのネット上は《おめでとうございます。あとは大量生産して安定供給できるように頑張ってください》《ついに念願の国産高純度フッ化水素ができたのに、取材に応じないLGディスプレーは本当に奥ゆかしいですね》など皮肉たっぷりのコメントが噴出しており、こうした声は図らずも韓国内の事情を言い当てているとの見方もある。
「もし国産化に成功したとしても実用化できなければ意味がない。高純度フッ化水素の場合、その純度と生産コストが重要で、韓国がホワイト国から除外されたにも関わらず中国産一本に絞らないのは、中国産は不純物が多く、再処理にコストが掛かるからなんです」(韓国事情に詳しいライター)
加えて韓国では、フッ化水素を巡り過去に苦い経験を持つ。
「2012年に化学工場でのフッ化水素酸漏出により作業員ら5人が死亡し、住民ら4000人あまりが健康被害を受けたという大規模な事故が起きています。付け焼き刃で高純度のフッ化水素の国産代替品を生産しようとすれば、こうした悪夢が再び起きる恐れもあることから、実用するにしても相当慎重にならなければならないということです」(経済ジャーナリスト)
8月29日には日本の高純度フッ化水素の輸出が一部許可されたが、韓国政府は「厳格化措置の撤回を引き続き日本側に求めていく」としており、意地の張り合いは続きそうだ。
(小林洋三)