サッカー場195個分の広大な敷地に、18ホールのゴルフ場、開閉式室内外プール、活火山温泉の露天風呂、6コートのテニス場、レストラン、ヨガスタジオ、セミナー室…と至れり尽くせりの、鹿児島県の「さつまゴルフリゾート」が韓国の企業に買収されたと報じられたのは12月7日。購入者は韓国でゴルフ練習場やゴルフ場予約サイトを運営する「ショーゴルフ」で、売主は大和証券だったことから、韓国の有力紙の「中央日報」は、「日本の100大企業保有のゴルフリゾートを買収」と伝えた。
まるで日本企業がバブル期に行った“アメリカ買い”を彷彿させるような時代がかった表現だが、同社は日本のゴルフ場を5つ買収することを当面の目標としているというから、まるで中国の爆買いのようにも聞こえる。だが、これは半ば真実であり、日本のゴルフ場が韓国に買われようとしているのである。
「ショーゴルフのトップは10日付け地元メディアで、円安を『円デミック』ともじって、韓国ゴルフ業界で日本のゴルフ場の買収ブームが起こると予測しています。実際、今年4月には別の韓国企業が佐賀県のゴルフ場を買収しています。彼が言うように、円の力が弱いがため、ゴルフ場買いが韓国で進められているのは事実です」(経済ジャーナリスト)
だが、そこには日韓のゴルフ場を巡る特殊事情もあるのだとか。
「日本には韓国の4倍以上のゴルフ場があって、人口は韓国の2倍強ですから、人口比で考えても、日本の方が圧倒的にゴルフ場が多いことになります。一方、コロナ後の韓国ではプレー代が跳ね上がって、グリーンフィーは平日で日本の2倍近くかかります。そしてコロナが収束し日韓関係が改善すると旺盛な日本観光需要があって、かつ円の力が弱い今、韓国にしてみると日本のゴルフ場は格好の海外ゴルフ旅行先に映るのです」(同)
もっとも、韓国企業による日本の「ゴルフ場買い」はコロナ前からあって、佐賀県のゴルフ場を買収した会社は今回で3コース目になる。
余暇を楽しむゴルフにさえ、円安による日本の衰退が垣間見えてしまうとは何とも世知辛い話だ。だがショーゴルフのトップは、ゴルフ場でK-POPのコンサートを開催する計画などもほのめかしているが、そのあたりは日本のバブル期がそうだったように、どこかズレているようにも聞こえる。
(猫間滋)