夢グループ石田社長が激白「僕は歌手になる!」スター誕生のオーディションを受けたものの思わぬ事態が…

 僕が中学生だった頃は歌謡曲全盛期です。テレビをつければ当時、大人気だった桜田淳子さん、山口百恵さん、森昌子さんによる「花の中三トリオ」がいつも目に飛び込んできました。彼女達がテレビに映らない日はないといっていいぐらい。 

 そして、僕と同じ中学3年生だというのに彼女達は実にキラキラと輝いて見えました。“いいなぁ、僕もこんな風に気持ちよさそうに歌ってみたいな”と、いつしか歌手になりたいという思いが心の奥に芽生えてきました。ブラウン管の向こうにマイクを握って歌う自分自身の姿を重ねたのです。

 そんな時、「花の中三トリオ」をはじめ、数々のスターを輩出した登竜門番組『スター誕生!』のオーディションが福島県で開催されるという情報をキャッチしました。“このタイミングを逃すものか! 僕もきっとアイドルになれるはず”と早速、応募しましたら、すぐに参加通知が届いたんです。

 それはただの予選参加通知だったんだけど、僕、その通知がもう「合格」だと思い込んじゃったのね。というのも、僕の遠い親戚にあの有名な作曲家の市川昭介さん(享年73)がいたので、“きっと、おじさんのお陰に違いない”なんて、これまた勝手に妄想が暴走しちゃったんです。

 よせばいいのにクラスメートにオーディション前日、「みんな、高校受験頑張ってくれよ。僕は東京に行かなくちゃならなくなった」とまで宣言しました。そして「どうして東京に行くの?」と首を傾げる友達らに、胸を張ってこう言ったんです。

「歌手になるんだ。みんな、テレビの前で応援してくれよ!」

 そして忘れもしないオーディション当日。電車に揺られながらすでにレコードデビューを果たした自分の姿を思い浮かべつつ、郡山の会場へと向かいました。

 さあ、いよいよ僕が歌う番がやって参りました。選曲は沢田研二さんの『LOVE(抱きしめたい)』です。精一杯、気持ちを込めて「抱きしめたい〜♪」と歌いはじめたら、審査員の人に「はい、もういいよ」と言われたの。

 “ああ、さすがだな。やっぱりプロは見る目があるなぁ。歌い出しだけで自分の良さをわかってくれたんだ”と思って、「いつ東京に行けばいいですか?」って聞いたら、「まだ発表は終わってないよ」と素っ気なく言われて結果はまさかの不合格。

 有頂天だった僕の心はズドンと地面に突き落とされてしまいました。“最後まで僕の歌を聴いてもいないのに不合格だなんて! 大人の社会は酷い”と、怒り心頭で家に帰ったのはいいのですが……。ハタと我に返り、クラスメートに大口を叩いてしまった事を思い出しました。どうしよう、恥ずかしいな。みんなに何て言えばいいんだろう……。

 翌日、再び僕はみんなの前でこう言いました。

「やっぱり僕には野球しかない。東京に行くのはやめて野球選手になるよ!」

 鳩が豆鉄砲をくらったようにキョトンとしたみんなの顔が忘れられません。

石田重廣(いしだ・しげひろ)株式会社夢グループ、株式会社ユーコー代表取締役社長。1958年7月1日生まれ、福島県出身。自ら出演する「夢グループ」のテレビショッピングで大人気。昨年、保科有里とのデュエット曲「夢と…未来へ」で歌手デビュー。

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