夢グループ石田社長が激白!香港で始めたチョコレート土産事業「味よりも大事なことがあったのです」

 香港と日本の往復生活にもだいぶ慣れ、大流行した「スヴェルト」のおかげで会社の売り上げも右肩上がり。でもそんな時に、香港の事務所開設でお世話になっていたマンションオーナーからお叱りを受けたんです。
 
「あなたのやっている仕事は個人輸入というけれど、いかがわしい商品ばかり売っている。せっかく香港で仕事をしているのだから、もっとちゃんとした仕事をするべきだよ」

「でも、僕、ほかの仕事のやり方なんてわからないです」

 当惑した僕は正直にそう言いました。

 すると、その方は「シルクを扱ってみないか?」と助言してくださったのです。「日本ではシルクは高級品だけど、香港や中国ではシルクが安く手に入る。ご年配の方達がシルクが好きだから、日本でシルクを安く販売すればいい商売になるだろう」と。

 早速、僕は中国に行って安くシルク商品を作ってくれる工場と契約を結びました。今度は個人輸入じゃなく、本格的なシルク商品の輸入販売です。実を言うと、それまでの個人輸入では、薬事の問題やら輸入為替の問題で、何度か警察から注意を受けたことがあったんです。先のオーナーさんはそんな僕の事を心から心配してくださったのでしょう。

 そして、このオーナーの息子さんがカメラマンだったので、商品の撮影ももちろん彼にお願いすることになりました。シルクの話からちょっと脱線するんですが、このカメラマンが夜景を撮影するのがとっても上手な方だったんですね。で、こう言うの。

「石田君、僕の作品には香港の美しい夜景がいっぱいあるから、チョコレートのパッケージとして免税店で販売できるように交渉してくれないか?」

 ほら、海外旅行に行くと、たいてい免税店にはチョコレートが売ってますよね。アレですよ、アレ。お客様は香港に行った記念に夜景の美しいパッケージに包まれたチョコをお土産に買われるだろう…と、そういうイメージでした。

 さらに別の友人がそのチョコレート販売の事務所として、香港の一等地にそびえ立つ日本大使館も入っているビルの高層階のフロアを借りてくれたんです。受付嬢は3人。オフィスには僕の大好きな鯉を大きな水槽に7匹泳がせました。今でも家には鯉がいますけど、鯉というのは非常に運がある魚とされていて縁起ものなんですよ。

 さあ、それから免税店に香港夜景パッケージのチョコレートを無事、置かせてもらいました。ところが、そこからが想像を超える難しさだったのです。

 お土産のチョコレートって、だいたい皆さんいくらぐらいの予算で買います? 平均で1000円ぐらいだと思うんですが、3箱買うと1箱プレゼントなんていう手法もありますよね。当時のレートは1香港ドルが約15円だったから、20香港ドル=300円で免税店にチョコレートを卸していました。当然、チョコレートにはナッツが入っています。ところが、次第に価格競争が始まって、免税店から値下げして欲しいと言われるようになったんです。

 20ドルだったものを15ドルに、しまいには13ドルにして欲しいと…。

 そこで僕は考えました。チョコレートはカカオでできています。当初は上質なカカオを使っていたんですが、ライバル商品に価格競争で負けてしまう。そこで、試しに他社の商品を食べてみたところ、なんとまあ、どれも油っぽくて美味しくないわけです。「そうか、みんな安いカカオを使っているんだな」。それで僕もインドネシア産のカカオを安く仕入れて原価を下げました。さらに、割れているアーモンドを使用することにしたんです。

 だって、他社商品も食べてみたら割れているんですもの。だからね、免税店の人に聞いてみたんです。

「安くするのはいいけど、お客様からクレームはこないの?」

 すると、驚くべき言葉が返ってきました。

「免税店で買う時ってみんなお土産として購入するよね。あえて自分で買って帰って食べる人っていないでしょう」

 つまり味のクオリティよりも、ひと目見て香港とわかる綺麗なパッケージの品を手に取るのだと言うのです。

 なるほど、これが香港のお土産社会の競争なのか…そんな商売の世界を知った経験でした。それでは、次回は試行錯誤したシルク商品販売のお話をいたしましょう。

石田重廣(いしだ・しげひろ)株式会社夢グループ、株式会社ユーコー代表取締役社長。1958年7月1日生まれ、福島県出身。自ら出演する「夢グループ」のテレビショッピングで大人気。昨年、保科有里とのデュエット曲「夢と…未来へ」で歌手デビュー。今年8月30日に第2弾シングル「やすくして♡」を発売、ネット上でも話題に。

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