夢グループ石田社長が激白!“通販の手法”でコンサート事業を拡大「森昌子さんの引退コンサートも任されました」

 芸能プロダクション「あずさ2号」の仕事は通販事業で培った新聞広告やチラシでの営業が功を奏して順調にイベントの仕事が入ってまいりました。

 そんなある日、NHKホールに行った時のこと。ロビーの椅子にひとりぽつんと腰掛けている男性がいました。それが「雨」の大ヒット曲で知られる歌手の三善英史さんだったの。三善さんの歌う「雨」が大好きだった僕は思わず声をかけました。

「どうしてここに座っているんですか?」

 すると、三善さんは穏やかな笑みを浮かべてこう言います。

「ここが落ち着くんですよ」

 いろいろお話をさせていただくうちに、僕のなかで三善さんにうちの事務所にきてもらいたいという気持ちが芽生えてきました。でも、当時の三善さんはほかの事務所に所属されていて、当然その時は断られました。それでも僕は諦めません。

「三善さん、ずっとお待ちしていますから!」

 そう言い続けて約2年。ついに三善英史さんがうちの事務所に所属してくださることになったんです。

 狩人のふたりが恥ずかしがっていた「あずさ2号」という社名も、これでようやく変えることができます(笑)。新しい社名は僕の好きな「夢」、そして「グループ」を合わせて「夢グループ」としました。

 その後はCMでお馴染みの保科有里さん、チェリッシュさん、小林旭さん、松方弘樹さん、黛ジュンさん、千昌夫さん、黒沢年雄さん、フィンガー5の晃さん、ZEROさん、橋幸夫さん(所属順)と、所属タレントの数も増えていきました。

 かつて「スター誕生!」のオーディションに落ちた僕にとって、芸能界という世界で憧れの歌い手の皆さん達とお仕事ができるのは夢のようなことです。

 しかし、所属タレントさんが増えた分、これまでのようにイベントの仕事だけで繋いでいくのは無理があります。なぜならイベントの仕事は先方の依頼がないと成り立たないから。そこで、自分たちから何か興せないかと考えた結果、現在のようなコンサートを行うようになったんです。コンサートであれば、自分たちで会場を借りて出来ますからね。

 通販事業でのお客様は60~80代の方々です。その方々に見てもらう折込みチラシがコンサートのチラシに変わる。注文はうちで取り、チケットを発送する。一連の流れは通販と変わらないんです。徐々に多くの人が関心を持って下さり、信用も得ていきました。

 島倉千代子さんが亡くなる5年前からは僕の企画するコンサートで一緒にお仕事をさせていただきましたが、本当に素晴らしい歌手でした。西城秀樹さんも晩年、「同窓会コンサート」に出演して下さいました。

 そうこうするうち、森昌子さんの引退コンサートを僕が任される事になりました。昌子さんとは5年間ほどコンサートを行っていましたが、いちばん最初に言われたのが、こんな言葉でした。

「社長、私ね、芸能活動をお休みしてから昔のように思い通りに声が出ないの。でも、必ず声が出るように頑張りますね!」

 いま思えば、あの頃の昌子さんは少々自信を失いかけていたのでしょう。けれど、心配無用。コンサートの数を重ねるうちにみるみるうちに歌声に艶が出てきました。2019年末の引退コンサートで会場を包み込んだ昌子節。やはり、「NHK紅白歌合戦」でトリを務めた彼女の歌声は実に素晴らしいものでした。

石田重廣(いしだ・しげひろ)株式会社夢グループ、株式会社ユーコー代表取締役社長。1958年7月1日生まれ、福島県出身。自ら出演する「夢グループ」のテレビショッピングで大人気。2022年、保科有里とのデュエット曲「夢と…未来へ」で歌手デビュー。昨年8月30日に第2弾シングル「やすくして♡」を発売、ネット上でも話題に。

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