東京電力福島第一原発の処理水放出で、反発する中国からは、国際イタ電、中国の日本人学校への石や卵の投げつけ、果ては水産品以外の日本製品の不買運動にまで〝嫌がらせ〟が拡大しつつある。24日の放水から週末を挟んだ28日には、岸田首相も「遺憾と言わざるをえない」とコメント。まったく困った話だ。
「中国の反日運動によって、既に日本の株価に影響が出ています。中国では海外への団体旅行がつい最近、解禁になったばかりですが、訪日旅行の予約にはキャンセルが相次ぎ、中国人の爆買いが期待された百貨店などの小売り産業の株価が下落しています。中国の暦の上では9月末から10月頭にかけて10日以上も連休が続くので、この時期のインバウンドが期待されていたのですが…」(経済ジャーナリスト)
そして同じ時期の9月23日〜10月8日には、コロナで延期になっていたアジア大会が杭州で開催される。特に中国はスポーツでナショナリズムの高揚を図る過去があるので、どんな影響が出るのか心配されるのだ。
中国の反日とスポーツの関連で言えば、日本が尖閣諸島を国有化した2012年の一連の騒動が思い出される。この時はバドミントン、トライアスロン、体操、7人制ラグビー、卓球など、相手国で開催される国際試合への選手団の派遣見送りが相次いだ。またその点で悪名高く語られるのが、04年のサッカーアジアカップでのことだ。
「04年のサッカーアジアカップは、北京、重慶など中国の4つの都市で開催されました。当時の中国は、日本で01年に小泉首相が誕生して以来、靖国参拝などで反日感情が高まっていたところです。この時の日本代表は小野伸二や中田英寿などの主力を欠いたものの、中村俊輔の活躍などがあり連覇を果たしましたが、日本代表は大会を通じてブーイングを浴び続けました。特に準決勝のヨルダン戦では、試合開始前に流れる国歌・君が代がブーイングでかき消されるという非礼ぶり。当時のジーコ監督が、スポーツに政治が持ち込まれていると、怒りを露わにする場面もありました」(スポーツライター)
過去の例を見れば今回も、何かひと騒動ない方がおかしいと言える状況なのだ。そして既に予兆は起きていた。
「中国では7月28日〜8月8日にかけてユニバーシアードが行われたのですが、開会式で各国の代表がスタジアム入りすると大歓声で迎えられる中、日本と韓国の選手団の時には会場が静寂に包まれたのです。政治的お達しがあったのでは、といぶかる声が上がったのは言うまでもありません。この大会は、ゼロコロナ政策に反発した白紙革命に続いて、習近平独裁への抗議活動が呼び掛けられていたために、厳戒態勢での開幕となっていました」(同)
そして今回のアジア大会は、ロシアとベラルーシの不参加が決定。国際政治の黒い影を引きずるものになる。選手のコンディションに波及するような、深刻な影響が出なければいいが…。
(猫間滋)