「墜落死」プリゴジン氏に囁かれる暗殺説の根拠「プーチンに反抗した40人が怪死している」

 自家用機の墜落により死亡したとされるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏。同機の墜落原因については様々な憶測が流れているが、中でも取り沙汰されているのが機内に仕掛けられた爆発物によるもの、という説だろう。つまり、事故ではなく暗殺だったという噂だ。

 そんな中、プーチン大統領が墜落を「悲劇」と述べ、乗員乗客の遺族に「哀悼の意」を示したと報じられた。

「ロシア紙『RBC』などによれば、プーチン氏はプリゴジン氏を、90年代から付き合いのある才能に恵まれた男で有能なビジネスマンだったとして、『困難な運命の男で、人生の中で深刻な間違いも犯してきた。しかし、自分自身や大義のために必要な成果を達成してきた。決して忘れない』と語っています。『深刻な間違い』とは、2カ月前の反乱を指していると見られますが、現場検証や遺体の身元確認が続く中で、いち早くプーチン氏が追悼の意を表した背景には、この墜落を事故と位置付け、『これは政府による粛清ではない』として事態の幕引きを図りたいとの思惑があるとされています。ただ、『事故死』をすんなりと受け入れる人は多くありませんね」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 確かに今回のプリゴジン氏に限らず、プーチン政権下では幾度となく、政権に対抗した人物たちが謎の死を遂げている。

 2004年には、ロシア政府に対し批判的な記事を書いたロシアのリベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が、機内で飲んだ紅茶で意識不明になり、回復した2年後、自宅アパートのエレベーター内で射殺体で見つかった。2006年には、やはり政権批判を繰り返していたロシアの元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏が、亡命先のロンドンで放射性物質のポロニウムが混入された緑茶を飲んで死亡している。13年には、プーチン氏との関係を訣別した政商ボリス・ベレゾフスキー氏が、やはり亡命先のロンドン郊外の自宅で首をつった状態で見つかった。

「その後も、15年にはプーチン氏にとって最大の政敵と呼ばれた、野党指導者のボリス・ネムツォフ氏がモスクワ中心部で射殺されるなど、プーチン氏にとって好ましくない人物、あるいは彼を批判した人たちが次々と謎の死を遂げているのです。しかも、以前は政治家やオリガルヒ(富裕層)などが多かったものの、ウクライナ戦争以降は、科学者や技術者、軍幹部、官僚、政治家と、ありとあらゆる職種の人間が事故や自殺で亡くなっています」(前出・ジャーナリスト)

 8月25日、ベラルーシの国営ベルタ通信は、ルカシェンコ大統領がプリゴジン氏に対し、「気をつけろよ」と声をかけ「命が狙われる可能性を警告した」が、プチゴジン氏はそれを無視した、という記事を掲載している。

 反プーチン派の怪死者は実に40人に及んでおり、その全ての死にプーチン政権が関与しているとの報道もある。だが、真相は依然として謎のままなのである。

(灯倫太郎)

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