今年で開港30年目を迎える関西空港。国際線の就航する空港としては成田、羽田と並ぶ日本の空の玄関口だが、実は今、この巨大空港に「水没の危機」が迫っているという。
大阪湾の泉州沖5キロに浮かぶ同空港は、埋め立て地による人工島としては世界初の海上空港だ。だが、海底の地盤は粘土層で非常に柔らかく、工事当初から大規模な地盤沈下が起きていたと言われている。
空港ホームページによると、開港当時から運用されている1期島は、86年12月の埋め立て開始から94年9月の開港までの沈下量が9.82メートル。開港から22年12月までの約28年で3.73メートル沈下しており、36年間で13.55メートルも低くなっているのだ。
一方、07年から使用されている2期島は、15年間で5.36メートル。埋め立て開始からでは17.07メートルと沈下量はこちらのほうが大きい。しかも、直近1年の平均沈下量は22センチで、1期島の6センチを大幅に上回る。
「関空は海抜がもっとも高い地点でも10メートルに達しておらず、低いところは1メートル台です。18年に台風21号が関西地方に上陸した際、連絡橋にタンカーが衝突したことが大きく報じられましたが、このとき滑走路の一部が冠水しています。今後想定以上のスピードで地盤沈下や地球温暖化による海面上昇が起きた場合、『水没』は十分にあり得るのです」(航空ジャーナリスト)
もちろん、空港側も手をこまねいているわけではない。ジャッキアップによるかさ上げや、埋立層の締固めなど最新技術を駆使して地盤沈下対策に取り組んでいる。
「ただし、これにも限度があります。なかでも一番の懸念は南海トラフ地震。津波による甚大な被害とともに、『液状化現象を引き起こし、急激な地盤沈下が発生する可能性がある』と指摘する専門家もいます」(前出・ジャーナリスト)
地盤沈下と海面上昇に加え、巨大地震による津波と液状化…。年間1000万人以上の旅客をさばき、10万回以上の発着をこなす関空の土台を支える状況は、あまりにも厳しいと言わざるを得ないようだ。