米ロ中の「月面着陸競争」が過熱!戦争中に「47年ぶり」探査船打ち上げのワケ

 ロシアは8月11日に、月面探査機「ルナ25号」を積んだソユーズを打ち上げた。ウクライナ侵攻で反転攻勢を受ける中、一方では月の探査をするのだという。「24号」が打ち上げられたのが1976年と言うから、何と47年ぶりのことだ。世界初の、月の南極への着陸を試みるとのだという。

「世界では『第2次月面探査』ともいうべきブームが起こっています。アメリカが中心となって、日本やイギリス、韓国なども含めた27カ国と共同で有人月面探査を含む『アルテミス計画』が進められていることは有名。一方、月に関しても米中対立は発生していて、中国も独自に月面探査を進めています。アルテミス計画では25年に有人探査を実現させる予定で、中国の方は30年までに実現させるとしています」(経済ジャーナリスト)

 つまり、有人の月面探査ではアメリカと中国が競合し、無人ではロシアが具体的な動きで名乗りを上げたわけだが、無人の方ではインド、そして日本が競合することになる。

 インドは7月4日にロシアから月探査船の「チャンドラヤーン3号」を打ち上げていて、日本はJAXA(宇宙航空研究開発機構)が8月26日に月探査機の「SLIM(スリム)」をH2Aロケットで打ち上げる予定だ。先に「OMOTENASHI(オモテナシ)」が昨年11月に、アルテミス計画で使用される大型ロケットの「SLS」に載せて打ち上げられたが、ロケットから分離後に思ったような制御が効かず、計画を断念していた。
 
 ところで、ロシアはウクライナと戦争中で、経済制裁も食らっている。なので「なぜこの時期に?」との疑問がわくが、実際は逆に「今だからこそ」とも見られているという。

「専門家からは、ウクライナとの戦争で国際的にロシアが孤立化、戦争も苦戦して威光が失われようとする中、わけても経済制裁にビクともしていないことを示したいのだろうという見方が上がっています。ロシアが持つ技術力の中でも、宇宙は先を誇れるレベルにあるからです」(同)

 例えば直前に打ち上げられたチャンドラヤーンの月着陸予定は8月23日とされているが、今回のロシアのルナはそれより早い20〜22日を予定していて、1日でも早く月着陸を果たしたいという意図が透けて見える。もちろんそこには「1番乗り」という名誉ばかりでなく、月にはレアアースが豊富に眠り、未来資源の獲得という実利があるのは言うまでもない。

(猫間滋)

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