世界的品薄に…「iPhone15」が出足絶好調!それでも株価がさえない理由

 9月22日に発売されたアップルの新型スマートフォン「iPhone 15」が高い人気を示している。基本モデルの「15」の入手までかかる日数は10日で、前機種の「14」は6日だったので、およそ2倍の待ち時間となっている。中には前回より早く手にすることができるモデルもあるが、最上位機種の「Pro Max」になると48日も待たなければならない状況だ(「14」は39日)。

 ところがアップルの株価がさえない。9月6日、中国の政府関係者にiPhone使用禁止令が出たと報じられると、190ドルあった株価が170ドル後半まで下落。その後、15日にiPhone15の予約開始、22日に発売されてもなお180ドルを上回ることはなく、170ドル台前半で推移している。

「22日の発売日には中国でも通販サイトで1分で売り切れるなど相変わらずの人気の高さを誇っていますが、同時にファーウェイが8月後半に発売した『Mate 60 Pro』の人気も目立っています。ファーウェイはトランプ政権時代から半導体規制を受けているにもかかわらず、同機種は5Gに対応して最新技術と遜色ない高性能。中国の半導体製造大手のSMICが製造した回路線幅7ナノメートルのチップは、最先端ではないものの十分に高度な技術力を示しています」(経済ジャーナリスト)

 今回のiPhone最新機種は、アップルが中国からインドに主要生産拠点を移して販売されたもの。だからアップルは中国からのデカップリング(経済分断)に一部成功したわけだが、じつは中国が一番の上得意であることには変わらない。この点で、今後、中国で自国びいきが進みiPhoneの買い控えが進むリスクは依然として残る。

「今年、人口で中国を抜いて第1位となったインドの市場はもちろん大きい。ですが他の新興国の轍を踏みたくないインドは規制が多く、外資の参入障壁が高い上に、大量消費を行う中間層が薄くてマーケットとしては未成熟。インド国内でもIT産業従事者が少ないなど、あらゆる面で中国に取って代わるにはまだまだ時間を要します」(同)

 つまり中国からのデカップリングは危険で難しいのだ。

 加えて、iPhoneには折りたたみ式のフォルダブルスマホのラインが欠けている。現状ではシェアはわずかなものの、既にサムスン電子などがリードしている分野で、アップルも開発に乗り出しているとの話はあるが、いきなり太刀打ちできるかは不明。対してファーウェイは、今年3月に世界最薄の折りたたみスマホ「Mate X3」を発売し、世界を驚かせたばかりだ。

 新型iPhoneも、毎年マイナーチェンジの繰り返しで、新機軸を打ち出せているわけではない。そろそろアップル帝国も揺らぎかねない時期に差し掛かっているのかもしれない。

(猫間滋)

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