9月23日の日本時間夜9時に開幕した、中国・杭州でのアジア大会。今のところ目立った混乱は見られないが、不透明な国際社会と中国経済、習近平の中国共産党専制が強まる中で開催される「アジア版オリンピック」という大規模スポーツイベントとあって、開会式から“政治色”全開となった。
「中継したCCTV(中国中央電視台)の映像では、まず習近平のアップが映し出されたかと思えば、人民解放軍兵士が8人で中国国旗『五星紅旗』を持ち行進して入場。しかもスタンドはチケットの一般販売がなく、中国共産党と大会関係者がオリンピックセンターの観客席8万800席を埋め尽くし、中国国家の『義勇軍進行曲』を斉唱するという、『これってスポーツイベント?』と首を傾げるような異様な光景でした」(スポーツライター)
まるで中国共産党の党大会のような雰囲気だが、屋外のスタジアムなのでちょっと違う。例えるなら、そう、北朝鮮のマスゲームを思わせるようなものだ。
演出は「水」がモチーフだそうで、
「
またインドの女性3選手の大会参加が、事前に拒否されるという一件も勃発した。インド外務省によると、太極拳で出場予定だったが出場までに必要な書類を受け取れなかったために入国できなかったというものだが、この3選手は、中国とインドが領有権を争っているインド北東部のアルナチャルプラデシュ州の出身。互いの特派員の受け入れを拒否し合っているという状態だったため、その嫌がらせという見立てが大方だ。
この騒動でインド外務省は「アルナチャルプラデシュ州は昔も今も、今後もインドと不可分」と声明を出し、中国外務省の毛寧報道官が「中国の領土の一部だ」と反発する事態になっている。
そして、盛り上げ役を買って出ているのが、一国二制度が形骸化している香港だ。香港は約690人の選手が参加しているが、日本の参加選手が約770人なので、いかに多いかがわかる。前回18年のインドネシア・ジャカルタ・パレンバン大会では、日本が今回とほぼ同じ762人だったのに対し、香港は580人だった。つまり前回大会より100人以上も多い大選手団を派遣しているのだ。いわゆる刷り寄りというやつだろう。
ちなみに男子サッカーは開幕前から既に試合が行われていて、日本は初戦の対カタールを3−1で下して勝利したが、現地観客はカタールを応援。日本がゴールすると、会場は沈黙。大会は10月8日まで続くが、少なくとも、競技自体に政治色が入り込まないことを望む。
(猫間滋)