「強国」ウクライナを支える「エグい三大兵器」(1)ロ軍の戦車を軒並み“鉄クズ”に

 プーチン大統領にとっては大誤算だったに違いない。ウクライナ侵攻開始当初は、圧倒的な兵力差で国土の約4分の1を占領したものの、ウクライナ軍が次々と領土を奪還。ロシア軍を退けた「エグすぎ三大兵器」の攻撃力とは─。1年4カ月にわたる戦いと今後の反転攻勢の行方を完全解説する。

 ウクライナで「MVP級」の活躍を見せたのが、アメリカ製の高機動ロケット砲システム「ハイマース」。発射機を軍用トラックに搭載することで、舗装路での高速移動を可能にした。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。

「そもそも多連装ロケット砲は『当たれば御の字』くらいの考えで、一斉に多数撃つことで一定の範囲、つまり点でなく面を制圧する兵器です。ところが、ウクライナに供与されたハイマースは長射程かつGPS誘導の高い命中精度で、前線から離れた位置でもロシア軍の武器庫や弾薬庫、補給路の要衝を次々と破壊。偵察用ドローンが攻撃対象の位置情報を正確に割り出し、ピンポイント砲撃を可能にしたわけです」

 ハイマースは227ミリロケット弾6発の一斉射撃が可能で、射程は約80キロに及ぶ。

 軍事問題に詳しいジャーナリストの村上和巳氏もその威力を認め、こう話す。

「昨年11月、ウクライナ軍はそれまでロシア軍に占領されていた南部のヘルソン州を奪還しました。その立役者とも言える存在がハイマース。ロシア軍はドニエプル川に架かるアントノフスキー橋を補給路として、兵士や物資を送り込んでいましたが、ハイマースの長射程ロケットでこれを破壊。補給ルートを断ち、孤立した西岸のロシア軍は撤退を余儀なくされました。また、この3カ月前にも上流域にあるノバ・カホウカダムにかかる道路橋を攻撃。のちにダムは破壊されてしまいますが、水門を傷つけずに道路橋を封鎖したことで、高い命中精度を証明しました」

 今後の反転攻勢でも大きな働きが期待できそうだが、黒井氏はさらなる〝進化〟を口にする。

「ハイマースにエイタクムスというミサイルが搭載されれば射程は300キロまで延び、戦況に大きな変化をもたらすでしょう。ウクライナ側としては喉から手が出るほど欲しいはずですが、現時点でバイデン大統領は供与を否定しています。これを使うとウクライナからロシア国内も攻撃できてしまうため、プーチン大統領の過剰反応を警戒してのことですが、いずれ供与するかもしれません」

 かつて「世界最強」と称されたロシアの戦車部隊を鉄くず同然にしていったのが、攻撃型ドローンだ。

「ウクライナ侵攻が始まった当初、大きな戦果を挙げたドローンがアメリカ製のスイッチブレードです」

 こう話すのは国際ジャーナリストの山田敏弘氏。続けてその破壊力を語る。

「筒状のランチャーから発射され、装甲車や戦車目がけて自爆攻撃を仕掛けることから、〝神風ドローン〟とも呼ばれています。バックパックで持ち運びができるコンパクトサイズゆえに、攻撃力を疑問視する声もありましたが、ロシア軍の戦車を次々と破壊し、高い攻撃力を証明しました」

 ドローンは各国が開発競争を繰り広げているが、やはり軍事用においてもアメリカが一歩リードしているようで、

「実はウクライナ侵攻が始まる前から、米軍は実戦で使用し、アフガニスタンではMQ‐9リーパーという大型機で武装勢力の拠点を空爆。遠く離れたラスベガス近郊から遠隔操作をしていたそうですから、ドローンの出現は戦争の形を大きく変えたと言っていいでしょう」(山田氏)

 兵士が戦場から姿を消す日が刻々と近づいている!?

(つづく)

*画像はウクライナ国防相SNSより

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