ウクライナ軍による大規模反転攻勢を受け、実効支配していた地域が奪還されつつある中、ロシアのプーチン大統領にとって、喜ばしいニュースが飛び込んできた。
それが、18日までに行われた朝鮮労働党中央委員会会議で、党中央委員会政治局が打ち出した「激突する国際軍事・政治情勢に対処して米国の強盗さながらの世界覇権戦略に反旗を翻した国家との連帯をより一層強化する」という指針だというのだ。北朝鮮問題に詳しいジャーナリストが解説する。
「端的にいうとこれは、強盗のごとく世界を牛耳る米国に反旗を翻した『ロシア』に対し、これまで以上に全面支援しますよという決意表明で、この指針は『対外活動を徹底的に国権・国益死守の原則に基づいて自主的に、より積極的に繰り広げるための重大課題を提起した』と続くのですが、専門家の指摘では、提起した『重大課題』というのが即ち武器弾薬の供給であり、さらには派兵であるというんです。つまり、これまでは傍観者として表だって対露軍事支援をしてこなかったが、今後は武器支援も義勇兵派遣もしますよということ。その通りだとしたら、ワグネルが前線から撤退した今、兵力不足が否めないプーチンとしては、渡りに船でしょう」
金総書記はロシアの国慶節に際し、プーチン氏に「強国建設の目標を実現し、世界の平和と安全を守っていこうとする両国人民の共通の念願のため、プーチン大統領と固く手を取り合っての朝露間の戦略的協力を一層緊密にする用意がある」といった内容の祝電を送っているが、
「今年4月には、両首脳が初会談から4年を迎えたとして、北朝鮮の外務次官がロシアとの連帯を強化したとの談話を発表。それと並行するように、5月には北朝鮮がワグネルに対し、約1万発の砲弾を北朝鮮北東部・豆満江(トマンガン)駅から、列車で極東のウラジオストクまで運び込む計画が、米当局によって確認されています。この輸送ルートは、2019年4月に正恩氏が特別列車でウラジオストクを訪問した際と同ルートであることから、北朝鮮が友好・協力を象徴するため、この経路を選んだとされています」(同)
むろん、北朝鮮がロシアとの連携強化を望む背景には、深刻化する食料難と外貨獲得という狙いがあるが、兵力不足、武器弾薬が枯渇しつつあるロシアにとっても、喉から手が出るほど欲しいのが兵士と武器支援だ。つまり、この取引は双方の利害が完全に一致しているというわけである。
「ロシアの国防専門家が国営テレビで話したことによれば、昨夏の時点ですでに10万人の北朝鮮義勇兵が戦争に参加する準備ができていた、とのこと。1個師団が1万人とすれば10万人なら10師団、ウクライナ東部や南部戦線をおよそ100㎞守れる規模ですから、これはかなり大きな戦力です」(同)
北朝鮮の軍事支援を受け、対ウクライナ戦争が振り出しに戻らないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)