これまで、国の内外に対し強気の姿勢を見せてきたロシアのプーチン大統領が、なんと自国民の視線に怯えはじめているという。
サンクトペテルブルクで開かれていた国際会議「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」が17日、4日間の日程を終え、閉幕した。会議に参加した国々が非米欧諸国ということもあり、会合ではウクライナのゼレンスキー大統領を「ネオナチ」と非難し、支援する西側に対しても口汚い言葉を連発。だが一方、ロシア経済については、ウクライナ侵略が続く中でも失業率や物価上昇率が「記録的な低さ」と説明。胸を張ったとされる。
「会合でプーチン氏は都合のいいデータを示しながら、さも自らの功績だと言わんばかりに低失業率を強調したようですが、専門家によれば、低失業率の理由は単に戦場への招集を嫌うロシア人男性らが大量に国外へ出国したことも要因にあるとか。おそらくは来年3月の大統領選を意識してのことでしょうが、裏側が透けて見える発言には説得力が感じられません」(ロシアウォッチャー)
とはいえ、とりあえずは対外的には強気の姿勢を見せているプーチン氏だが、実は国内では求心力の低下で以前にもまして発言が曖昧になり、聴衆とも距離を取るようになったとみられている。その代表的なシーンが、12日のロシアの日にクレムリンのホールで国家賞を授与する際に顕著に表れたという。
「当日のプーチン氏による演説動画をTwitterにアップした、ウクライナ内務省のゲラシチェンコ顧問は《小さな男が、国民を恐れながら(彼と聴衆との距離に注目)、途方もない犯罪を実行している》と指摘。さらに、スウェーデンのニュースサイト『へーラ・ヒッシンゲン』発行人のマルクス・ハンキンス氏も、《プーチンが聴衆に対して取っているディスタンスを見てほしい。パラノイア(偏執・妄想症)がすぎるのでは?》とTwitterに投稿し、大きな話題になりました。動画を見ると、たしかに観客席はプーチンのいる演台から20メートル以上も離れている場所から並べられており、この光景は異常。そういえばプーチンはコロナ発生時、クレムリンでの会談の際にありえないような長テーブルの端と端に座るなど極端なことをしてきましたが、とはいえ演説の際に出席者からこれほど遠く離れたことは、これまでありません。一部専門家の間では、これは自分のそばには誰も近寄らせたくないというプーチン氏の心理の表れでは、という見方もあるようです。戦争の結果が出せない中、国民の突き刺さるような視線に耐えられなくなったのかもしれませんね」(同)
13日に行われた軍事記者らとの会談でも、記者たちが求める質問に正面から答えられず、終始ウクライナの「非ナチ化」「非武装化」を強調するだけで、抽象的かつ曖昧な回答に留まったとされるプーチン氏。
一方、逃げ腰のプーチン氏をしり目に、歯に衣着せぬ物言いによりロシア国内でじわじわ人気を高めているのが、ワグネル創始者のエフゲニー・プリゴジン氏だ。終わりが見えない戦争にフラストレーションも最高潮な国民に対し、「国民の不安に具体的な対応をしない国防省やエリート層に憤りを感じる!」といった同氏の発言はロシア人の心をがっちり捉え、次期大統領選候補としても浮上している。
逃げ腰のプーチン氏を国民が見捨てるのは、もはや時間の問題かもしれない。
(灯倫太郎)