現代において、もはやインターネット網はなくてはならない存在であり、それを支えるのが地球規模の通信インフラだ。GPS技術が大幅に発達した昨今、大陸間を繋ぐ国際通信のメインは衛星と思われがちだが、実は、現状ではまだ「光ファイバー海底ケーブル」がその9割以上を担っているといわれる。
そんな中、在沖縄米軍向け情報誌「This week on OKINAWA」が、沖縄近海で光ファイバー海底ケーブルから中国製盗聴装置が発見されたと報道し、日米当局関係者の間に大きな衝撃が走った。
同誌によれば、この問題が指摘されたのは約5年前の2018年ごろだという。証言した日本の大手通信会社の技術担当者によると、総務省職員から中国製盗聴装置のサンプル写真を提示され、海底ケーブルの検査を強化するよう要請があったという。その後、海底ケーブルの総点検を実施したところ、盗聴装置を発見したというのだ。
「同誌は証言のウラを取るため、総務省の元職員も取材しています。すると、その人物は写真こそ見たことはないものの、『海底ケーブルに中国製の盗聴装置が仕掛けられた事実は知っていた』と、その事実を認めたといいます。在沖縄米軍の情報が筒抜けだった可能性もあり、米当局も記事に対し強い関心を寄せていると言われます」(全国紙記者)
ところで、光ファイバーケーブルを通じて情報を盗聴することは、技術的に可能なのか。ITジャーナリストが解説する。
「中国だけでなく、米ソの諜報機関でも、それこそ電話線の時代から海底ケーブルを盗聴し、そこから情報収集することは、いわば諜報活動の常套手段です。しかし、光ファイバーケーブルは信号自体が光なので盗聴は技術的に困難だとされてきました。ただ、海底ケーブルの場合、一定の区間ごとに信号を増幅させる装置が設置されているため、ここに特殊な盗聴器を取り付ければ、増幅装置から漏れる電磁波を盗聴して情報を解析できると言われます。記事によれば、総務省から総点検を指示された際に見せられた写真には、増幅装置に取り付けられた小型盗聴装置も写っていたようです」
今年2月に、米国本土上空などに無人偵察気球が飛来し、それを米軍機が撃ち落として大騒動になったことは記憶に新しい。さらに、中国が米国本土に近いキューバとキューバ領内にスパイ施設を設置する計画で大筋合意した、と8日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報道し、波紋が広がっている。
世界的規模で対外諜報活動を活発化させる中国。その動静から片時も目が離せないのである。
(灯倫太郎)