反転攻勢で敗色濃厚!クレムリンでいよいよ始まった「プーチン後任探し」の行方

「ウクライナはどの戦線でも目的を達成できていない。彼らは戦車160両、装甲車360両以上を失ったが、ロシア軍が失った戦車は54両だ!」

 13日、国営テレビに出演し、ウクライナの反攻についてこう説明したプーチン大統領。しかし、両国軍の兵器損害を集計しているオランダの軍事情報サイトによれば、侵略開始からロシア軍が失った兵器の数はウクライナの4倍という試算もあり、さらにはロシア国防省と民間軍事会社「ワグネル」の対立が激化した今、プーチン氏がかつてない苦境の中にあることは間違いないだろう。

 そして今、プーチン支持を表明していた議員の中からも、「プーチンの後任を探すべき」という声が上がりはじめている。

「政府関係者の間では、これまで表立ってプーチンの後任人事の話題が出ることはなかった。しかし、5月27日に放送されたロシア国営テレビの政治番組で、ロシアの下院議員らが2024年の大統領選を機に『クレムリンの指導者を変えるべき』と発言。議員らは、その理由を『ヨーロッパとの関係をロシアが回復するためには必要不可欠なこと』としていますが、公共のメディアでこういった議論が持ち出されるのは、ロシア国民のプーチン離れが加速していることが背景にある。来年の大統領選は波乱が予想されます」(ロシアウォッチャー)

 下院議員らの主張は、ロシアを政治的に正常化させ、ロシア社会と西側諸国とが共に受け入れられる指導者を探したい、という至極まっとうなものだ。そしてその指導者は、官僚に対して屈しない豊富な知識と経験を持つ人物だとされる。そうした中で、次期候補と目されているのが、ミハイル・ミシュスチン首相だというのだ。

「同氏は1966 年生まれの57歳。98年にロシア連邦税務局に入局し、連邦経済特別区管理局局長を歴任。2010年に連邦税務局長官に任命され、20年1月、当時のメドヴェージェフ首相が内閣総辞職した際に、プーチン大統領から後継首相に指名されたエリートです。ただ、ロシアで危機管理を担うのがロシア連邦保安庁(FSB)とロシア連邦警護庁(FSO)で、大統領になるにはこの2つの組織から信頼を得ているかどうかも条件になる。そうした面でもミシュスチン首相が最有力候補だと言われています」(同)

 とはいえ、ピョートル大帝に憧れを抱くプーチン大統領が、負け戦のまますんなりとその座を降りるとは思えない。ウクライナの反転攻勢で敗色が濃くなってきたプーチン氏を次に待ち構えるのは、クレムリンの中の権力争い、そして国民による審判かもしれない。

(灯倫太郎)

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