毎日のお仕事、ご苦労様です。5月だというのに、真夏と思うような暑さの日々が続いたよね。熱中症にはお互い気をつけましょう。
それに、5月は大きな地震も多かった。能登半島、千葉県、鹿児島と続き、そのたびにテレビ番組は特番体制となり、アナウンサーは避難を呼びかけ、被害状況をリポート。その後、四国などでも地震があった。皆さんは大丈夫だったでしょうか?
東日本大震災、阪神・淡路大震災、熊本地震など、繰り返される大地震で多くの人が亡くなったし、東日本大震災では津波で、阪神・淡路大震災は火災で無残にも多くの人が一生をかけて手にしたマイホームを失ったよね。命は助かったものの、人生設計がムチャクチャになった人も少なくなかった。
2月のトルコ・シリア地震での建物崩壊は悲惨だった。耐震基準はあっても守られていなかったからだ。築20年余りで日本の耐震基準に沿って建てた住宅であれば、一度の大きな地震で崩れるということはないかもしれない。
とはいえ、地震での圧死は建物が崩れて下敷きになるだけでなく、家具や家電製品が倒れて被害にあう人も多い。昔の百科事典のようなものが飛んできて大ケガをしても決して不思議なことではないからね。丈夫な家だけでなく、家の中にあるものが倒れたり、飛んできたりして被害にあわないか、一度、ゆっくりチェックしてもらいたい。
万が一、地震で家が倒壊した場合、家を建て直すのは困難を極める。国や地方が建て替えの費用を全額出してくれることはない。せいぜい、がれきになった家屋を回収してくれるくらいだ。それに加えて若干の見舞金くらいだろう。
そこで日本人は地震保険に入っている人が多い。地震保険は火災保険に加えて入る保険だ。よく知られたことだが、地震の揺れでは家はなんとか保ったけど、古い石油ストーブが倒れて火事になり、家が燃えた。また、地震で発生した火災が緊急時のために消火がうまくいかず、3日目に自宅まで火が及んで燃えてしまう、ということもある。
実は火災で家が燃えたとしても、地震による火災が原因の場合、補償はされない。火災保険とともに地震保険に入っていて初めて補償の対象となる。ただし地震保険は建物の価値の2分の1までしか加入できない。そうなると家を再建できないと不安や不平の声は少なくなかった。それを受けて、この数年で従来の地震保険だけでは足りない部分を上乗せする〝地震上乗せ補償〟(地震保険上乗せ特約)が販売されている。個人の居住専用住宅のみが対象だ。
これで建物の評価額いっぱいの補償をつけることができるようになった。すでに地震保険に入っている人は、特約契約できないか調べてみるのもいいかもしれないね。
地震保険も上乗せ特約までつければ、万が一の地震で家が全壊などしても再建する大きな手助けになる。ただし、問題はその保険料(掛け金)の高さだ。
地震保険料は住んでいる都道府県、建物の耐震性、耐火性などによって大きく異なるが、例えば2015年に新築した2000万円の木造家屋、500万円の家財で補償をつけたい場合、年間の保険料をある会社で試算したら、東京都で年13万円、保険料の安い北海道などでも6万3000円となった。決して安いものではないよね。
よくマイホームには家賃がかからないと言う人がいるけど、こうした保険料に修繕費や税金など、それ相応の費用が必要だ。こうした費用は賃貸に住んでいれば不要となる。
そう遠くない将来に起こる可能性が高い大規模地震。マイホームを失って住宅ローンだけ残ったという悲劇に見舞われないためにも、これからの人生でどう住まいと関わったほうがいいか、考えてもらいたい。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。