2013年9月に習近平が巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱してから、今年で10周年の節目を迎える。習政権の看板事業で、約140カ国も参加しているが、中国政府は今に至っても10周年の記念式典の事については沈黙したままだ。また、今年は第2回「一帯一路フォーラム」も開催されて、全世界から指導者たちが中国に集まることも話題になっていたが、中国政府からはその発表も未だにない。
「あれだけ声高らかに世界中に提唱した一帯一路ですが、中国政府の途上国に対する『債務の罠』ではないかと世界中から中国政府はマークされてしまい、各国が鉄道建設や港湾整備に及び腰になっているのが現状。パキスタンやタイなども中国が本当に援助を目的にインフラ整備にお金を出しているのか、疑惑の目で見ているんです。日本はアメリカと足並みを揃えて参加していません。G7で唯一参加していたイタリアも、来年初めに迎える契約の更新をしない模様です」(大手紙外信部デスク)
どうやら、一帯一路は大きな曲がり角にきているそうなのだ。新型コロナへの対応であったり、香港の民主化デモへの弾圧など、要因はいくつか考えられるが、イタリアが「脱退」となれば、この事業にとって大きな痛手となりそうだ。イタリアは経済活性化を期待して19年に加わったが、3年で約34億ユーロの輸出増にとどまったが、逆に中国からの輸入額は200億ユーロ以上増えたというデータもある。
「中国は記念式典を開催したとしても各国の指導者たちが集まらない可能性を怖がっているんです。前回の第2回一帯一路フォーラムの時よりも参加数が少なくなると、人気がないことがバレてしまう。中国としては面子を潰されるのは最大の屈辱ですから、それなら触らないほうがマシだと考えているのかもしれません」(前出・デスク)
ここにきて中国の経済戦略に各国が警戒感を深めているということだ。それに加えて中国の強権的な人権問題が孤立化を推し進めているようにも見える。「一帯一路」が袋小路に迷い込んだことを、習近平は誰よりも自覚しているのかもしれない。