「米中貿易戦争」トランプの報復に一歩も譲らない習近平「3つの自信」

 世界がトランプ政権による相互関税で大混乱しているなか、34%の上乗せが課せられた習近平中国が堂々と報復に出た。「目には目を」とばかり、即断で全てのアメリカからの商品に同率の「34%」の関税を課すと発表。これには日頃から習近平中国の愚かさ、汚さを指摘してきた記者も、思わず「立派!」と唸った。

「熟慮」を連発し、なかなか行動に移せない石破茂首相がトランプ大統領就任後、周回遅れで会見し、しかも官僚が作文したメモを棒読みするだけでトランプ氏の意向を聞くだけだった姿を見せられてきただけに、習近平主席の肝の座った決断に素直に感心した。

 中国経済は現在、断崖絶壁に立っていると言っていいほどの苦境のど真ん中にある。習主席の役目は未曽有の不況から抜け出し、生活に追われている労働者・農民工を守ることである。そのためには海外市場から追い出される訳にいかない。しかしトランプ氏の関税攻勢に譲歩を求める機会を持とうともせず、真っ向から勝負に出たわけである。

 なぜ中国は、反撃措置を取れるのか。

 一つには、興亡を繰り返した4000年の歴史の中で得た交渉(戦争)の経験と知恵がある。中国からアメリカを見れば、第二次大戦後に突然、成り上がった国家で、目先の損得への理解はあっても次代の流れを見抜いていないという訳だ。

 二つには、トランプ氏は自国の利益に固執するあまり、同盟国をも敵に回しており、いずれ孤立すると見ている点。

 そして三つ目に、先進国家はサプライチェーンが完成しているために相互関税は必ず自殺行為となって跳ね返ってくるが、中国の場合は国内でサプライチェーンが完結しているため、トランプのいじめに耐えられるという自信だ。

 その自信の裏付けは、中国の先端産業の進展の速さとスケールの巨大さにある。習氏が主席に就任して国家目標として最初に打ち出したのが、製造業を世界の先端産業に変革させるべく「中国製造2025」だった。これが発表された2010年代の初め、その実現は不可能と見られていたが、いまやEV(電気自動車)ではエンジン車を凌駕する勢いにあり、また太陽光パネル、車載蓄電池、ドローン、半導体、通信(6G)などでも世界の頂点に立っている。

 これが、トランプ大統領に習近平主席が一歩も引かない理由となっているわけだが、対し米政権は4月9日、相互関税第2弾として、計104%の関税を発効した。果たして中国が今度はどう出るのか、見ものである。

(団勇人・ジャーナリスト)

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