「ショイグー! ゲラーシモフ! 弾薬はどこだ!」
やはり、あのパフォーマンスは「撤退するする詐欺」だったのか。あるいは時間稼ぎのためのブラフだったのか。
ウクライナ最前線への弾薬不足のため、ワグネルに死傷者が急増しているとして、ロシア正規軍のショイグ国防相やゲラシモフ軍総司令官を激しく批判。今月5日には、ワグネル戦闘員をバフムトから離脱させると表明していたワグネル創設者、プリゴジン氏。
ところが7日になり、突然自身のSNSに「戦闘続行に必要な弾薬と兵器の供給が約束された」と投稿し、東部ドネツク州の要衝バフムトで戦闘を継続する意向を表明した。
「プリゴジン氏がSNSにアップした動画で、兵士の遺体を前に『この連中は志願兵として来てお前たちのために死んでいった。お前たちがマホガニーでできたオフィスでぶくぶく太れるように』と怒りをあらわにしたのが4日のこと。翌5日には、バフムトからの離脱を発表しました。それからわずか2日後に、掌返しの戦闘続行宣言ですからね。通常、正規軍が一民間軍事会社の脅しに屈して要求を呑むなど考えられないこと。それだけ状況が逼迫しているとも言えますが、一方、ロシアでは約束が履行されないこともままある。また、1回だけは補給するが後は知らない、ということも十分考えられうる。つまり今後、二転三転することが想定されるため、西側も大きな驚きとして受け止めていないようです」(全国紙記者)
さらにプリゴジン氏は、ロシア軍とワグネルの調整役に「アルマゲドン」の異名を持つ、スロヴィキン将軍が任命されたとも報告。同将軍を「戦い方を知っている唯一の将軍」「合理的な将軍は他にいない」と称賛しているが、
「同将軍は、シリア内戦やチェチェン紛争などに関与した『強硬で残忍』と言われる軍人で、プリゴジン氏とも、チェチェン共和国のカディロフ首長とも深い関係にある。同将軍は昨年10月から今年1月までウクライナでロシア軍を指揮したものの、成果を上げられずプーチン氏によって更迭されたという経緯があり、その裏にはショイグ国防相やゲラシモフ軍総司令官による画策があったとの噂もあります。それが事実であれば、今後はスロヴィキン&プリゴジン陣営とショイグ&ゲラシモフ陣営の内部対立はさらに激しさを増しそうです」(同)
プーチン氏としてはスロヴィキン将軍をなだめ役に立たせたものの、それが逆効果になり、両者の遺恨を募らせる可能性も大きいというのだ。
「正直、正規軍幹部にすれば、ワグネルはしょせん肉の壁でしかなく、使い捨てでいいと考えているため、関係が改善されることはあり得ない。一方、傭兵会社であるワグネルとしては、充分な報酬が与えられず弾薬不足であれば、軍部の命令に従う理由がない。つまり、この狐と狸の化かし合い状態はこれからも続くはず。当然、ウクライナもその辺りの事情は把握済みでしょうから、あえて一喜一憂することもないでしょう」(同)
毎度お騒がせな軍事会社だが、今後もしばらく「プリゴジン劇場」は続きそうだ。
(灯倫太郎)