ワグネル創設者「戦場で全員殺す!捕虜は取らない」宣言の裏に「グロい思惑」

 第2次大戦後の1949年に全面改訂された「ジュネーブ条約」では、捕らえられた戦闘員の保護について、こう定義している。

1)捕虜は、常に人道的に待遇しなければならない。
2)捕虜は、常に保護しなければならず、特に、暴行又は脅迫並びに侮辱及び公衆の好奇心から保護しなければならない。
3)捕虜に対する報復措置は、禁止する。

 そして、今日では世界のすべての国が、このジュネーブ第三条約の締約国となっている。
 
 ところが、ウクライナで戦闘を続けるワグネルのトップであるプリゴジン氏が、この定義を逆手に取り、捕虜に対する「保護し、看護し、傷つけない」義務に違反しないため、今後は戦場において捕虜を取らず、敵兵を見つけた場合は一人残らず皆殺しにする、全員殺害の方針を取ることを明らかにしたと24日のAFPが伝え、世界に衝撃が走った。

「報道によれば、この発言がある少し前に、ワグネルと関連のあるテレグラムチャンネルで、2人のウクライナ兵がロシア兵捕虜を撃ち殺そうと話す動画を投稿。この動画を受けたプリゴジン氏が23日、ウクライナ兵の暴挙に対し『国際法上の義務を守らねばならず、これに違反しないよう上記のように決めた』と述べたと伝えています。ただ、テレグラムにアップされた動画自体がフェイクの可能性もあり、言い方を変えれば、面倒なので捕虜にせず、皆殺しにしてしまえということ。それがプーチン氏からの指示なのか、独自の判断なのかはわかりませんが、ここ最近のプリゴジン氏は破れかぶれな印象がぬぐえない。専門家の間でも、同氏と正規軍との確執が相当広がっている可能性があると見られています」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 一方、そんなワグネルに浮上しているのが、スーダン軍と戦う準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」への軍事支援だ。米CNNテレビでは先週、ワグネルがスーダンの隣国リビア経由でRSFに地対空ミサイルを供与したとする情報筋の談話を報じたばかりだが、

「近年、アフリカでの活動を拡大してきたワグネルは、鉱物資源を巡る利権に目をつけてスーダンと接点を持ったとされますが、実はスーダンの隣国、リビア東部の軍事組織『リビア国民軍(LNA)』を支援してきたのです。国防筋から衛星画像を入手したCNNによると、スーダンでの軍事衝突がスタートした今月15日以降、リビアの航空基地にはロシアの輸送機が飛来。上空からRSF陣地に落下傘でミサイルを供与しているといった情報もあり、ワグネルがRSFに対し、相当肩入れしていることが見て取れます」(同)

 報道を受け、ブリンケン米国務長官は24日、「スーダンでのワグネルの関与を非常に懸念している」とコメント。しかし25日、ニューヨークの国連本部で記者会見したロシアのラブロフ外相は「ワグネルは民間企業だ。(スーダンの人々は)希望すればそのサービスに頼る権利がある」と強調、なんら問題はないという姿勢を示している。

 ただ、この発言、聞きようによっては「ワグネルはもう我々とは関係ない」ともとれることから、プリゴジン氏が名実ともに評価されないウクライナでの戦いを捨て、スーダンにシフトするのでは、という見方がさらに強まっている。
 
 ただ、それが「もう面倒くさいから皆殺しにしてしまえ!」の真意だったとしたら、そら恐ろしいばかりだ。

(灯倫太郎)

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