橋幸夫「齢80、今度は芸術の世界に行こうと決めた」/テリー伊藤対談(1)

 5月1日のラストステージで歌手活動からの引退を表明している橋幸夫。しかし大学入学、2代目橋幸夫の募集、芸術家への転向宣言など、そのチャレンジ魂が尽きることはない。80歳を目前に控え、ますます活動的なセカンドライフに天才テリーが迫る!

テリー 5月1日の浅草公会堂。いよいよ橋さんの歌手としてのラストステージですね。

 そうですね。一昨年から日本中でラストコンサートをやってきて、残りは10カ所ぐらいかな。

テリー どうですか、ファンの皆さんは。泣いてるでしょう? 自分の青春との訣別みたいなところがあるから。

 泣いてくれてる方もいるし、いろんな方から「ほんとにやめるんですか」って聞かれますね。

テリー 改めて、歌手活動からの引退は、いつ頃から考えてたんですか。

 発表したのは一昨年ですけど、「幕引きをどうしよう」と考え始めたのは4、5年前ぐらいかもしれないですね。

テリー 理由は何だったんですか。

 やっぱり70を超えた頃から「思ったような声が出ないな」と感じることが増えてきたんですよ。ここ最近はずいぶん芸能界も変わってきて、「これからどうすりゃいいのかな」とも思ったり。それで引退後の自分の行く道が正式に決まったら、皆さんに報告したほうがいいのかなと思い始めましたね。

テリー 引退をちゃんと発表したいと。

 それで「夢(橋が所属する夢グループ)の石田社長に話したら、「わかりました、任せてください」って、発表の場をちゃんと用意してくれましてね。それから後援会長にも言わなきゃいけないなっていうんで、挨拶に行ったり。とにかくその2人が最初にきちんと話をしなきゃいけない人だったから。

テリー 「橋さん、やめないでくださいよ」って止められなかった?

 いや、「自分でけじめをつけたい」っていう話をしたら、後援会長も「まぁ、そうだよね。長くやってくれたもんね」って、すぐに納得してくれました。

テリー 橋さん、今度の誕生日(5月3日)で80歳になりますよね。それもありました?

 やっぱり80過ぎた人間があんまりダラダラやっててもね。この前出した本(「80歳、スター卒業、新入学生。」)にも書いたけど、私はもともと歌が大好きで始めたわけじゃないんで。63年も続けるとは思ってなかったですね。

テリー 17歳でデビューですからね。

 それで、その後に、恩師の吉田(正)先生の墓前に行って報告もしました。「引退後はどうするかな」っていうことは、その辺りから考え始めたんですよ。

テリー でも、普通は趣味に没頭してのんびり暮らすとかさ、特に考えなくてもいいじゃないですか。

 普通に毎日寝たり起きたりっていうのは趣味じゃないんですよ。性分に合わない。人それぞれ生き方、考え方があるけど、私はきちんと決めることが好きなんでね。だから大学に入って、今度は芸術の世界に行こうと決めたんですよ。

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