橋幸夫「美空ひばりさんの家で朝までよく飲んだ」/テリー伊藤対談(3)

テリー さっき「日本の芸能界が変わった」って言ったでしょう。昔は芸能界のトップスターって雲の上の存在じゃないですか。ヒット曲は日本中みんなが歌えるし。そう考えると、橋さんは最高の芸能人生ですね。

 そうですね。最高と言えるかわかりませんけど、ほんとにありがたかったですね。特に恩師の遠藤(実)先生や吉田先生が、どれだけ私のために考えて曲を作ってくれたか。

テリー 映画にもたくさん出て、股旅物や女歌やリズム歌謡もやってね。

 好きなことをさせてもらったし、それは順風満帆でしたね。

テリー 橋さんって、人とあんまりつるむタイプじゃなかったと思うんですけど、芸能界では誰と仲よかったの?

 一緒にデビューした佐川満男とか木田ヨシ子っていう子とはよく話したし、飲みに行ったりしましたね。あとは僕は誰とでも付き合ってました。

テリー 美空ひばりさんは?

橋 お嬢はすごく可愛がってくれて、よく家に誘われて朝まで飲んだりしてましたよ。

テリー 何でそんなに可愛がってくれたんですか。

 僕が映画の撮影で京都へ行くようになった時、お嬢は京都に住んでたんですよ。その後すぐ東京へ引っ越すんだけど。最初は六本木辺りだったかな。

テリー へぇ。

 それで雑誌のインタビューで、京都で一緒に撮影した時に「あんた、デビューしていろんな歌を歌ってて、映画も出ててすごいね」とか、そんな話をしてくれて。「今度うちに遊びに来なさいよ」って言われたんですよね。

テリー じゃあ、京都で飲んでたの?

 いえ、東京に引っ越してからですね。

テリー 朝まで2人だけで飲むんですか。

 最初は山川っていう僕のマネージャーが酒飲みで、そいつと3人で飲んでましたね。そのうち「山川はうるさいから、できるだけ1人でおいで」ってなりましたけど。でも、そこにお母さんがいるわけですよ。

テリー ああ。ひばりさんのマネージャーでもありますもんね。お母さんは一緒に飲まない?

 そう、家にいるだけ。それで「お嬢と仲よくしなさいよ」って言われてね。だから僕も年中行くようになって、まったく身内になっちゃった。

テリー ひばりさんとはデキなかったんですか。

 デキませんよ(笑)。

テリー だって酒の勢いで抱いちゃうとかありそうじゃないですか。

 ありませんよ。僕、小林旭氏が塀を乗り越えてお嬢の家に入ってくるのを見ましたから。お嬢が「今日、また来るからね」って言うから「誰が?」って聞いたら「旭よ」って。あの人はおもしろがって、玄関なんかから来ないんですよ。

テリー そうか(笑)。でも、そうすると橋さんが結婚する時、ひばりさんは寂しがったでしょう。

 寂しがってた。結婚式は帝国ホテルだったんだけど、ちょうどお嬢は隣の日劇でショーをやってたんですよ。だから招待状を送ったんだけど、来なくて、「すぐ隣なのに来ないんだね」って言ったら「ごめんね」って。それは、さすがに堪えたらしくて、あとで「お祝いに」って置物を買ってきてくれましたよ。

テリー それはやっぱり橋さんのことを好きだったんじゃないの? 抱かれたかったんですよ。

橋 いやあ、それはないな。ほんとに弟のように可愛がってくれたんですよ。

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