ルーマニアとウクライナに挟まれた「モルドバ」は、九州よりひと回り小さい面積を持つ内陸の農業国。ワインの産地として知られているが国民1人あたりのGDP(国内総生産)は5285ドル(2021年)と日本の7分の1以下で〝欧州最貧国〟とも呼ばれている。
91年、ソ連崩壊後に独立したが最近再び緊張が高まっている。同国のサンドゥ大統領は「国内に潜入したロシアの破壊工作員がクーデターを計画している」と非難。米国のブリンケン国務長官もこの問題について「深い懸念」とコメントしており、2月21日にポーランドのワルシャワで行われたバイデン大統領との両国首脳会談でも話し合ったとみられている。
だが、27日には欧州の大手LCC「ウィズエアー」が「最近の情勢、および同国の領空のリスク」を理由に14日から首都キシナウに発着する全便を運行停止にすると発表。緊張がさらに高まったと感じた人も多いようだ。
「モルドバ東部に位置する『沿ドニエストル共和国』は、国際社会は承認していませんが親ロシア派住民たちの事実上の独立国。14年にはウクライナのクリミア自治共和国に同調する形でロシアへの編入を求めています」(軍事ジャーナリスト)
この地域には治安維持などの名目で以前からロシア軍が駐留。ウクライナ侵攻の前は1500人程度だったが、現在は5000人以上に兵力が増強されているとの報道もある。
「沿ドニエストル共和国からキシナウは約30キロ、黒海に面したウクライナ南部の都市オデッサも約60キロと近い。ロシアにとっては地政学的にも極めて重要なくさびとなっています」(同)
しかも、モルドバは小国で兵力・装備ともに開戦前のウクライナと比べても大きく劣る。西側諸国の支援がなければ防衛も困難だ。
「電撃作戦で首都キシナウを狙えるほど距離は近い。ロシア本土からは飛び地で補給面の問題はありますが、硬直した戦況の打開策としてここから軍を動かす可能性もあるでしょうね」(同)
戦火がこれ以上拡大しないことを祈りたい。