ダイノジは春から九州へ「芸人の地方転勤」は生き残りの賢い手段だった

 所属先の吉本興業より、4月から福岡よしもとに拠点を移すことが発表されたお笑いコンビ「ダイノジ」。会社勤めのサラリーマンならこうした地方転勤はよくある話だが、芸能界では珍しい。ただし、まったくないわけでもない。
 
 なかでも福岡は以前から事務所を問わず多くの転勤芸人たちの受け皿となっており、06年には「パラシュート部隊」とピン芸人の「ゴリけん」、12年には「我が家」の杉山裕之(※現在は東京復帰)、16年には波田陽区がワタナベエンターテインメント九州事業本部にそれぞれ移籍。いずれも地元局ではレギュラー番組を複数抱え、九州の売れっ子タレントとしての地域を確立している。

「吉本興業が47都道府県に派遣している『住みます芸人』は大半が無名ですが、前出の彼らは移籍前からテレビで活躍していて実績もある。全国区での露出は減っても知名度があり、ライバルの少ない地方では貴重な人材として重宝されます」(テレビ誌編集者)

 もともと故郷・大分県で中学の同級生だったダイノジの大地洋輔、大谷ノブ彦は現在50歳で芸歴は29年目。02年の「第2回M-1グランプリ」決勝進出を果たした実力派コンビで、大地は07年08年と2年連続で「エアギター世界選手権」の優勝者としても有名だ。

「ちなみに大地は北海道のローカル長寿バラエティ『ブギウギ専務』(STV)に現在も出演しており、地元では大泉洋の出世作『水曜どうでしょう』に並ぶカルト的な人気を誇ります。そのため、道内のテレビ関係者からは『札幌に移籍してほしかった』という声も聞かれるほどです」(前出・編集者)

 東京で燻っている中堅芸人や一発屋芸人が、地方局で出演番組がヒットして人気を確立するケースは珍しくない。08年に詩吟ネタでブレイクした天津木村は21年に岩手に移住し、現在は東北で複数のレギュラー番組を持つ。また、15年に「あったかいんだからぁ」のフレーズで脚光を浴びたお笑いコンビ「クマムシ」も北陸密着型のローカル芸人として富山や石川県では大人気だ。

 一見、左遷や都落ちのようにも思える芸人の地方転勤。東京のような華やかさはないが、生き残るためには案外堅実な方法なのかも。

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