「都会風を吹かすな」炎上騒動に見る、田舎暮らしの現実と「ご近所ガチャ」

 町の広報誌で移住者に対し、「都会風を吹かさないよう」「品定めされることは自然」といった表現が不適切と批判を集めた福井県池田町。今回炎上した「池田暮らしの七か条」について町の担当者は、複数のメディアの取材に対し、町内33カ所の区長の提言をまとめたものだと紹介している。
 
 要は地域に早く溶け込めるようにとの意図で移住者へ向けられた提言なわけだが、ネット上では《悪く言えば排他的》《見方を変えれば、町側が「田舎風を吹かす」ってことだけど》など厳しいコメントが目立つ。ただし、その一方で《それが地元の本音》と理解を示す意見も多かった。
 
 ちなみに国の支援を受けながらその土地に移り住み、生活支援や地域の活性化に取り組む「地域おこし協力隊」として活動したあと、任期終了後にその土地に定住する率は65%(*令和3年度、総務省発表)。一般の移住者よりも高い意識を持っていた隊員ですら3人に1人は土地を離れており、田舎暮らしの厳しい現実を物語っている。

 コロナ前に大阪から中国地方の農村に移住したものの、わずか1年半で戻ってきたという40代の男性会社員N氏は失敗した理由を次のように話す。

「移住前には民泊をしながら滞在して下見を重ねましたが、実際住むのとは別物でした。『昨日、○○にいたよね?』と言われることも多く、プライバシーがないと感じたほど。また、自治会の活動も盛んでいろいろな役割を任されました。でも、そんな環境の変化に、移住に乗り気だったはずの妻が耐えられなくなり、出て行ってしまったんです」(N氏)

 これは〝移住あるある〟のひとつ。同様の理由で移住を断念した人は少なくない。

「家族で移住する場合、全員に同じ覚悟があるわけではありません。それに馴染めるかは移住先での人間関係次第で〝ご近所ガチャ〟に左右される部分が大きい。そのため、人付き合いがそこまで濃密ではない地方都市や、田舎町でも市街地に住むほうがリスクは少ないと言われています」(移住サポートNPO職員)

 将来、地方への移住を考えている人も多いと思うが、慎重に考えたほうがよさそうだ。

(トシタカマサ)

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