将来、地方への移住を考えている人は少なくないが、都会からいきなり田舎暮らしでは環境が違いすぎて苦労が多いのも事実。就農などはっきりとした目的があれば別だが、そうでなければ“田舎すぎない”ほうが都会の人間には適応しやすい。
これまで数多くの移住者を取材し、自身も東京と地方で二拠点生活を送るライターのトシタカマサ氏は、「現在住む場所とのギャップが少ない地域のほうが失敗しにくい」と語る。
「役所や大きな病院、スーパーなどの商業施設が近くにあるかどうか。徒歩圏内とまでは言いませんが、老後も住むなら路線バスなどの公共交通機関が利用できるエリアがいい。そう考えた場合、田舎でも市街地、いわゆる“トカイナカ”がいいでしょうね」(トシ氏)
過疎化が進む地方でも市街地であれば生活に必要な施設はある程度揃っている。近年は小さな町でもコンパクトシティ化が進み、暮らしやすさはだいぶ向上しているという。
「田舎でも市街地なら近所付き合いもそこまで濃密ではありません。一戸建てよりマンションなど集合住宅のほうが新規参入のハードルは低く、ある程度の距離感を保ったまま付き合えます」(同)
ちなみに希望移住先が雪国の場合、一軒家だと冬場は除雪作業をしなければならず、定年後のリタイア生活には注意が必要だ。ある程度年がいってからの移住であれば、集合住宅のほうが便利だろう。
また、自治体の中には移住者に対しさまざまな支援を用意しているところが多い。当然、条件はあるが、活用しない手はない。
「例えば『一定年数以上の居住で住宅を譲渡』『移住者に1人100万円』など手厚い移住者支援制度のある自治体もあります。そうした地域の中から移住先を絞り込むのもいいと思います」(同)
移住先を決めるうえでの条件や優先順位は人それぞれだが、大きな費用が掛かるだけに失敗はしたくない。短期間の“プチ移住”に終わらないよう、参考にしていただければ幸いだ。